今回紹介するのは 『RAYSTORM』(レイストーム)
ゲーム解説記事の第4弾だ。
歴史や実際にプレイしての感想そして魅力を解説する。
■ はじめに 『RAYSTORM』(レイストーム)とは (1996)
・ 公式動画 Ray'z Arcade Chronology
レイストームは、1996年にタイトーから発売された縦スクロールシューティングゲーム。タイトルはゲーム内での作戦名「オペレーション・レイストーム」より。
当時の2D画面シューティングで美麗さを極めた感があるレイフォース。『レイストーム』は3Dポリコンでさらなる進化を遂げたのだ。
1994年の作品『レイフォース』の構成を「レイストーム」は受け継いでおり、ストーリーもレイフォースの並行世界だ。 後のレイクライシスを含めてレイシリーズと呼ばれる。
● 稼働状態について
発売当初から人気が高いゲームであり、タイトー直営以外でも設置された。
当時はやや斜陽となっていたシューティングゲームのジャンルだが、レイストームはギャラリーが付くほどの人気だった。プレイ時間が長いため待ち時間が長かったのもギャラリーが増えた要因だろう。
初心者もプレイしやすい工夫が用意されていたのも、多くの人を惹きつけ人気が高まった理由と考えられる。
● あらすじ
ゲームのジャンルはSFだ。
■ ストーリー
2219年。人類は恒星間航行を可能として、100年が過ぎていた。
地球は植民地を拡大していた。反発した植民惑星はセシリア連合を組織。反乱を開始した。
反乱軍は短時間で植民惑星を制圧。地球破壊を宣告する。
地球側はオーバーテクノロジーを使ったR-GRAYを使用。オペレーションレイストームを開始した。
■ 開発経緯
レイフォースの続編の企画が立ち上がる。開発コードネームは『R-GEAR』
表現力の向上が課題となるが、開発が進んでいたFXシステムへ移行する。『R-GEAR』はリセットされて『レイストーム』となった。*4
■ ハードについて
playstation / Fanchile
「レイストーム」のアーケード版は、PlayStationの互換基板でタイトーが開発したFXシステムのFX-1Bで登場した。家庭用のPlaystation版より若干ハード性能が高く、画面が綺麗で少し処理が早い。
3Dポリゴンは新しい技術であり、格闘ゲームやドライブゲーム。各ジャンルが可能性を広げていた時代だ。1996年のタイトー業務用ゲームはFXシステムが多く「サイキックフォース」や「まじかるでーと」等が発売された。
当時は1991年発売「ストリートファイターⅡ」以降、格闘ゲームが大人気となった時代だ。シューティングゲームは縮小傾向にあり、シリーズものやアレンジが大半となっていた。ナムコも1996年に『ゼビウス 3D/G』を発売している。 タイトーは翌年にGダライアス、1998年にレイクライシスを発売。その後はタイトー自身によるシューティングゲームは激減する。
レイストームはシューティングが黄昏の時代に登場している。
■ 移植への道のりと成功
Playstation Collection / PseudoGil
レイストームの移植先となる初代プレイステーションは1994年12月3日発売。物凄い人気ハードだった。
品薄が続いていたプレイステーション本体だが、レイストームの発売時期には供給が安定していた。シューティングゲームは人気が縮小しておりタイトル数が少ない。 その中でアーケードからの移植で、かつ画面が綺麗なレイストームは目立っていた。プレイステーションのカタログに掲載されたり、店頭に発売告知ポスターが張られて存在感を示している。 プレイステーションとレイストームを買ったシューティングゲームのファンは多かったのではないだろうか。
● 家庭用移植作でも人気となる
64/365 PlayStation generation / NINAC video production
レイストームのプレイステーション版は1997年1月10日に発売。アーケード版は1996年8月4日に発売されているので、なんとたった6ヶ月ほどで家庭用が登場した。 開発はアーケード版開発チームが担当した。 ハードに合わせて映像処理の軽減、ゲーム面ではエキストラモードや新しいサウンドモード追加等が行われた。
アーケード版がプレイステーション版の互換基板であったことから、家庭用レイストームの完成度は極めて高かった。
39,800円のプレイステーションでアーケードとほぼ同じゲームが遊べるのだ。 短期間で最新ゲームが移植されたインパクトは大きい。プレイステーション版「レイストーム」は高い人気となった。
・家庭用の効能 人気の持続と向上
レイストームは難度が高いゲームだ。そしてアーケードではプレイ時間と予算の制約が有る。 だが家庭用なら初心者でも存分に遊べる。上級プレイヤーでも練習やテストに使う、そして家庭用モードで遊ぶなど新たな楽しみがある。
レイストームはアーケード版と家庭用が上手く補完した。人気持続と向上に成功した理由だろう。
■ 魅力を解説
レイストームの魅力を紹介する。
解説に当たって:レイストームは3Dポリゴンを使用しているが、ゲーム内容は2Dだ。当記事でも2Dシューティングとして解説する。
■ 美しい画面やサウンド
レイストームの魅力は美しいこと。派手で美麗だ。
視覚面では、目を引くメカニックデザインや変化に富むステージ。空中を曲線を描いて切り裂くレーザーそして派手な爆発や演出。区切りとなるムービーや音声案内による緊張と緩和も見事だ
■ 画面、3Dデザイン
メカニックのデザインは分かりやすい。
R-GRAYはスーパーパックを背負ったスーパーバルキリーを彷彿させる。変形する敵機はウェーブライダーを多くの人が想像するだろう。 その他、大型の移動要塞や空中空母など。他作品や定番から上手く導入している。
またレイフォースに登場した敵と似たキャラも多く、上手くバージョンアップされた。
・過度な演出は無い
レイストームは過剰にカメラが動いたり急激な視点変更が無いのが良い。 ~私は3D酔いをしやすく、過渡期のポリゴンゲームでは顕著だった。だがレイストームで酔うことはほぼ無く済んでいる。
■ サウンド
サウンドもレイストームの魅力だ。
切ないメロディーライン、浮遊感のある音楽は作品に大きな魅力を与えた。
移植作ではパック版を除いて、音楽にアレンジバージョンが搭載される場合が多い。 移植第一弾のプレイステーション版で既にミックスバージョンが収録された。 ゲームでは音声もプレイを盛り上げている。
■ ゲーム構成
ゲーム自体は2Dの縦スクロールシューティングでオーソドックスなものだ。
画面の華やかさだけに3Dを利用しており、手堅い手法といっていい。
ゲームステージの構成や進行は前作のレイフォースを踏襲している。ステージごとにマップが表示されるのも親切だ。
展開はシューティングゲームの定番を引用している部分もある。隕石群での戦い、対艦戦。敵惑星内部への突入、ジェネレーターの破壊や最終兵器との対決。まさに様式美だ。他社ゲーム「グラディウス」や「スターブレード」「シルフィード」等でも見られる展開だ。
■ 伝統の踏襲
ゲームシステムや構成はレイフォースを受け継いだ印象だ。
それゆえ大きな変革となる3D方式採用にも関わらず、うまくリスクを避けた。 ~ FXシステムでタイトー自ら製作したシューティングゲームは少ない。レイシリーズ以外にGダライアスがあるくらいだ。 なのにFXシステムの初期に完成度が高いゲームを出した開発陣の手腕は見事だ。
FXシステムでのポリゴンゲームは多彩だ。パズルゲームから格闘、シミュレーターなど幅広い。その中でもレイストームは人目を引くビジュアルやゲーム自体の面白さもある。さすがタイトーだ。
■ ゲームについて
レイストームは当時の新技術を採用している。
家庭用互換基板での制作、そしてポリゴンの導入だ。
だが見た目が豪華になったが新しい技術導入で破たんはしていない。レイフォースの基礎部分や構成を受け継いでおり楽しめるゲームだ。
■ 展開やストーリー
ストーリーはシンプルだ。
地球側と反乱軍の対立。 オーバーテクノロジーを利用した反撃。
わずかな希望を載せた最新鋭、そして開発中の機体が窮地の中で出撃する。定番だが誰でも分かりやすくそして共感できる展開だ。プレイヤーは画面の美しさやゲームプレイの楽しみに集中できる。
■ シンプルで面白い
ゲームはスタンダードな構成だ。
操作はジョイステイックと2ボタン。ボタンは空中と地上の撃ち分けそして特殊攻撃だ。自機選択はアーケード版が2種。
1996年の他社シューティングゲームはバトルガレッガや蒼穹紅蓮隊、ライデンファイターズ、セクシーパロディウス等が有る。内容では自機種類やパワーアップが増加したり、操作が複雑化する傾向にあったことと比べてレイストームは控えめだ。
■ 初心者も上級者も楽しめる
レイストームは初心者への配慮もされた。
シューティングゲームは続編は難易度が高くなる傾向が有る。そして不人気となる場合がほとんどだ。 だがレイストームは初心者への配慮がされているのは素晴らしい。難易度を抑えて続編が成功した珍しい例だ。
初心者向けの配慮を挙げてみよう。
プレイ面では自機選択時にロックオンレーザーのオートと手動の切り替えが可能だ。
大きな部分では、ミス時の救済だ。フルパワーアップアイテムがあり復帰しやすい。さらにコンテニューが可能かつ制限が無いので、予算さえ許せば誰でもエンディングが見やすい。
内容も初心者向きだ。プレイヤーは敵破壊をパターンで処理する場面が多い。上級者には、ロックオンに倍率が掛かる為に難易度は上がるが高得点の楽しみが生まれている。
■ 作品の最終シーン
自機は惑星セシリア中枢へ突入。ユダシステムの量子コンピュータであるスパルタカスを破壊。その後はさらに最終中枢制御体ユグドラシルを破壊する。
・アーケード版
自機は敵中枢からの脱出に成功。宇宙空間を進み僚機と合流、地球へ帰還する。
・移植版 エキストラモード
自機は敵中枢からの脱出に成功。
スタッフロールが流れる、自機は宇宙空間をただよう。
だが惑星セシリアは崩壊しており住民生存の望みは無い。
真のエンディング:さらに地球も崩壊している。自機、敵味方とも壊滅だ。
■ 移植
レイストームは移植に恵まれている作品だ。
アーケード版がプレイステーション互換基板で制作されたことで、業務用発売から半年という短い期間で家庭用に高い完成度で登場している。
シューティングゲームで名作とされる『ゼビウス』は完成度の高い移植がされるまで長い年月を要した。ファミコンへの移植まで約2年かかっており差異も大きい。『グラディウス』は、アーケード版登場から約2年後にシャープのパソコンへ移植されて高評価を得たがハード本体だけで約40万円だ。アーケード基板のバブルシステムが約28万円なので価格は上回る。パソコンが汎用機とは言えオリジナルより高い予算を払うのも躊躇するだろう。 それらの事を考えるとレイストームで早い期間の移植成功と低価格を実現しており隔世の感がある。
またレイストームの移植は間口が広いのも特徴だ。アレンジ版の収録や他ゲームとのパック版が登場する等。 さらに後の移植ではPC版やHD版で高解像度化も行われた。
レイストームは3~5年程度の間隔で新規ハードへの移植が行われている。移植作に恵まれず記憶から消えていくゲームが多い事を踏まえるとレイストームは幸運なゲームだ。
● 『レイ』というブランド
レイストームはレイフォースの並行世界として構築。後にレイシリーズとして定義付けされた。
だがレイシリーズは拡大することは無く、3部作で完結している。
■ テーマやオチのまとめ
レイストームは後継となるアーケードゲームは出ていない。
発売時期では後に『レイクライシス』が登場したが、『レイフォース』のプロローグとして作られている。 レイストームは真のエンディングとされるラストが破滅で終わっているので続編を想定していないのだろう。
レイシリーズ自体もレイクライシス以降は途絶えたままだ。
■ あとがき
タイトーは「インベーダー」で今の業務用ゲーム人気を作ったメーカーだ。
それゆえ元祖ともいえるメーカーが、時代が経てもシューティングで人気作を出すのは喜ばしい。
レイストームは移植作品が少ないが完成度が高い。それゆえ人気の持続に成功している。 タイトーは2023年に豪華なパック版「レイズ アーケード クロノロジー」を出すなど上手くユーザーの要望に応えている。
名作『ゼビウス』や『グラディウス』がその名を冠したゲームが度々登場するのと比べて、3部作から逸脱しないレイシリーズは潔い。タイトー自体もインベーダーは度々アレンジ版を投入している。ダライアスもタイトー以外の開発も含めて何度か新作が登場した。 だがレイストームはHD版などで視覚面等の改良はされるが、ゲームの基本部分は保たれたままだ。 名作と呼ばれたゲームがシリーズを重ねるうちに迷走するケースが多いのと比べてレイストームは幸せな作品だ。
2Dシューティングゲームが人気だった時代は遥か過去になった。それどころか現在はシューティングはFPS(一人称視点ゲーム)が主流であり、シューティングといえばFPSを指す時代。2Dゲームはすっかり元気が無い状態だ。新しいハードでも2Dシューティングはあまり見かけない。
登場時から高い人気を得たシューティングは珍しい。そして人気が続いているのも稀だ。
レイストームが登場してから24年が経つ。だが時間の流れに飲まれて消えなかった。レイストームは今も光り輝き続けている。
文章: GIL
■ 公式動画
■ その他
■ 注釈
*4 ゲーメストムック レイストーム より
『R-GEAR』は20022年に予約開始された『Ray’z Arcade Chronology』のAmazon版に特典でダウンロードコードが付属した。ステージ1が収録。
■ 参考
・Wiki レイストーム
発売年を参考にした。
・タイトーのあゆみ
https://www.taito.co.jp/70th/history
■ 更新情報
2024年7月25日 作成