今回紹介するのは 『STARBLADE』(スターブレード)
ゲーム解説記事の第3弾だ。
スターブレードの歴史や実際にプレイしての感想、そして魅力を解説する。
■ はじめに 『STARBLADE』(スターブレード)とは (1991)
・Wii版の公式動画
STARBLADEは、1991年にナムコから発売された3Dシューティングゲーム。
タイトルはゲーム内での作戦名オペレーション・スターブレードより。登場機体である「FX-01 ジオソード」はチーム・スターブレードとして編隊運用されている。 プレイヤーは宇宙船ジオ・ソードの乗組員となる。
『STARBLADE』はiOSのナムコゲーム配信希望タイトルの投票で一位になっており、時代が経ても人気が高いゲームだ。
■ あらすじ
ゲームのジャンルはSFだ。
ナムコの宇宙史といえるUGSF(連邦宇宙軍)シリーズに含まれる。
設定はGalaxian3と繋がる。敵は外宇宙物体、ライブ・ウェポンと呼ばれた未確認知的機械種UIMS(UIMS Unknown Intellectual Mechanaized Species)だ。今作「スターブレード」ではギャラクシアン3の大型機が退役しているため、新型機で迎撃する。
■ ストーリー
人類の宿敵であるUIMSによる第三次侵攻。UGSFは防衛作戦「オペレーション・スターブレード」を発動。ドラグーンJ2が全機、退役・廃版してしまったことにより長距離作戦可能な大型航宙艇がなくなったため、最新鋭航宙機FX-0を、チーム・スターブレードとして編隊運用して対応。
同年、チーム・スターブレード右翼ジオソード小隊の活躍により、コードネーム"レッド・アイ"、"アイス・バーグ"、"コマンダー"を撃破。
この後に、UIMSの頂点に位置するコマンダー残骸より、クェーサー制御技術を発見。
引用元:UGSF解説サイト
今作のあらすじはスターウォーズにかなり似ている。
スターブレードが公開された時期は、スターウォーズは初期3部作とエピソード1の間に当たる。スターウォーズ人気がやや沈静していた時期だ。スターウォーズを知らない世代にとっては新鮮だったはずだ。またスターウォーズを知る者には理解しやすいストーリーだ。 ~ ルーカスは著作権に厳しいことで有名だ。スターブレードの類似性が指摘されなかったのは不思議だ。 とはいえスターウォーズ自体も日本文化や映画にかなりインスパイアされている。俯瞰するとクリエイターや文化間で刺激を受けてエッセンスが還流しているような状態だ。
■ ハードについて
スターブレードはシステム21基板の通称「ポリゴナイザー」で登場した。1989年にナムコが作った3DCG向けに作られたアーケードゲーム基板だ。3Dポリゴンに特化したゲーム用ハードでは初期の物となる。
ポリゴナイザーは非常に硬派なゲームが多い。
ドライブゲームでは『ウィニングラン』シリーズ。空戦を主題とする『エアーコンバット』など初期の作品はシミュレーターに近い。後に『ウィニングラン91』や『ソルバルウ』など娯楽作品へ展開した。
1991年はナムコが大型筐体や3Dにお力を入れていた時期だ。その中でスターブレードはSF作品として『ソルバルウ』と同年にSYSTEM21Cで発売された。
■ 発売当時の状況 ~ 稼働状態について
「スターブレード」は、発売当時から人気が高いゲームでナムコ直営以外でも設置された。
改めて見るとなかなか大きな筐体だ。
初期は1プレイ200円、コンテニュー100円で稼働していた。
ゲームの難度は抑え気味であり、コンテニューすれば低予算でもエンディングを見ることが可能だ。
■ ナムコの大型筐体やアトラクション スターブレードが生まれるまで
Drive a Z32. / MIKI Yoshihito. (#mikiyoshihito)
ナムコの歴史は1955年に百貨店屋上に設置した木馬から始まっている。
テーマパークや体感型の筐体はナムコの得意とするところだ。
そしてバブル期を迎えて90年代にはテーマパーク「ワンダーエッグ」と「ナムコ・ナンジャタウン」が開設された。そんな中で遊園地テーマパーク向けのアトラクションとして『ギャラクシアン3』 が登場した。
『ギャラクシアン3』 は多人数プレイが前提で6人から16人用のバージョンが存在した。なおスターブレード発売以降に1993年に6人版も登場している。 なお私は、花博からワンダーエッグへ移設後の『ギャラクシアン3』 をプレイした経験がある。 人気が有って、満員でのゲーム参加だった。
スターブレードは『ギャラクシアン3』 の世界観を受け継ぎ、そして一人でも楽しめるように作られたゲームだ。
■ 大型筐体の流行と人気
AfterBurner Climax / Arcade Perfect
アーケードゲームでは大型筐体は花形であり、特に注目を集める存在だった。
1985年から1991年はバブル時代と呼ばれておりゲーム業界も非常に活気があった。大型筐体の投資や開発もピークにあった。
1990年頃はポリゴンゲームの黎明期でもある。アタリが1991年にハードドライビンを発売している。車のシミュレーターといって良い内容で、ナムコのレースゲーム「ウィニングラン」と似たアプローチだ。 なお大型筐体のポリゴンゲームでは1992年にセガがバーチャレーシングで追随している。
大型筐体ではドライブゲーム等と並んでシューティングゲームも人気があった。当時大型筐体に力を入れていたのがSEGAだ。大型筐体の着座型そしてシューティングゲームでは、1987年に『アフターバーナー』が登場して人気を集めている。1988年4月に『ギャラクシーフォース』、1990年にはG-LOC。11月にはR360を発売している。R360は360度回転コクピットを備えていた。だが大型筐体で2Dシューティングは力を入れていたSEGAだが3Dは余り目立つ作品が無い。 1994年「バーチャコップ」、1998年「バーチャロン」が発売された。 目立つのは家庭用になるが1995年のサターンで発売された「パンツァードラグーン」くらいだ。
1990年頃のアーケードでは、大型筐体の3Dポリゴンシューティングは少ない。スターブレードは目立つ存在だった。
■ 魅力を解説
スターブレードの魅力を紹介する。
■ 美しい画面やサウンド
スターブレードの魅力は「硬質な美しさ」だ。
作品全体を貫く硬い雰囲気と高い完成度が魅力だ。
視覚面でのポリゴンと重厚な効果音が調和しており、全体にソリッドな雰囲気を持つ。キャラクターデザインやカメラワークは素晴らしい。音楽や交信音も緊張感が有り、凛とした美しさを持っている。
また長めのエンディングムービーも用意される。ギャラクシアン3が持つアトラクションの雰囲気をゲームセンターに持ち込んで一人で楽しめる。 映画を見るような感覚も楽しめる作品となった。
■ 画面、3Dデザイン
スターブレードで目を引くのがメカニックのデザインだ。
ビジュアル・ディレクターで柳川渉氏が担当している。 柳川渉氏は後のメガCD版「シルフィード」にも参加した。
スターブレードのデザインは綺麗だ。
敵戦艦や背景のポリゴン数は少ないが、洗練されたデザインをしている。色数は抑えられて重厚感がある。また紫系の色が主体に使われて品があるイメージだ。
デザインは映画「TRON」の影響も見える。モノトーンの背景やオブジェクトの輪郭に明るいラインを入れるなど。
スターブレードは独自性が光る作品だ。
細かい部分ではスタッフロールのフォントがナムコでよく使われる書体と異なる。同じSYSTEM21のソルバルウは「ゼビウス(1983)」に。「ウィニングラン」では「ポールポジション」に色調やオブジェクト、書体が似せて作られている。 前作にイメージが縛られないスターブレードは洗練したデザインになっている。スターブレードの個性が高まっている部分だ。
■ サウンド
スターブレードの特長はBGMが少ないこと。だがそのことが臨場感を高めて高評価を得た。音楽は細江慎治氏。1996年にナムコを退社するまで多くのゲームに関わっている。
ゲームでは英語によるブリーフィングもプレイを盛り上げる。レッドアイへの解説は「スターウォーズ」での反乱軍によるデススター攻略を彷彿させる。*2
スタート時まもない戦艦との戦い。敵基地で回廊を進む時。音楽が無いことが集中力を生んで緊迫感を高めた。
・CD版も優秀な出来栄え
『スターブレード』はビクターからナムコ・ゲームサウンド・エクスプレス Vol.6で発売された。ギャラクシアン3とのコラボだが、スターブレードの音声や音楽が収録されている。なおゲームサウンド・エクスプレスシリーズはかなり高音質だ。私が所有するCDの中で上位にはいる素晴らしさだ。
■ ゲーム構成
スターブレードのゲーム面はシンプルだ。
自機操作はなく、プレイヤーは照準を操作して発射するのみだ。
スターブレードと同じ基板を使った「ウィニングラン」は操作が難しい。またエースコンバットもプレイヤーを選ぶ難度と操作系だ。 だがスターブレードのシンプルなゲーム内容はユーザーの印象に残りやすい。現在の高評価に繋がっているのではないか。
・ 展開やストーリー
ストーリーもシンプルだ。
ざっくり言えば展開はスターウォーズそのもの。目的は超大型兵器の破壊だ。それゆえプレイヤーは画面の美しさやゲームの楽しみに集中できるようになっている。
展開は定番の流れだ。敵内部への突入、ジェネレーターコアの破壊は映画スターウォーズの3作目『ジェダイの帰還』を彷彿させる。ゲームでは定番の構成であり、以降のナムコ作品では「エースコンバット」シリーズでも見ることができる。その後の他社ゲーム「レイストーム」でも見ることができる展開だ。
だが全体ではスターブレードの独自性は強い。 敵戦艦との戦い。宇宙空間に浮くキューブ状の構造物を抜ける。レッドアイの地上でビル群のような構造物を抜ける、回廊を進む。隕石群で敵砲台とのの戦いなど。 レッドアイを破壊した後に、さらに劇場版「伝説巨人イデオン」のガンドロワのような巨大超巨大兵器アイス・バーグが出るのも盛り上がる構成だ。
・美しい背景、分かりやすい敵キャラ
メカニックもシンプルで分かりやすい。スターブレードはギャラクシアンよりポリゴン数などを抑えた。システム21はテクスチャマッピングを持たない。だがそれがソリッドな美しさを生み出している。 ナムコらしさも盛り込まれた。ゲーム内でライバルとして登場するコマンダーは『ギャラクシアン』のエイリアンであるギャルボスを彷彿させる。これもなじみのキャラクターが出ることでプレイヤーが理解しやすくなっている。
■ 初心者も楽しめる
着座型、操縦桿による射撃や操作は大型アトラクション『ギャラクシアン3』 を受け継ぐものだ。
スターブレードは当時の新技術を採用していた。だが見た目が派手で目立つだけではない、楽しめるゲームだ。
プレイヤーは敵破壊をパターンで処理していくことになる。初心者にも挑戦しやすいゲームだった。
スターブレードは照準するだけでいい。自機操作が不要だ。それゆえ煩雑な操作は不要でゲーム画面や音楽の美しさに浸ることが可能だ。敵戦艦の間を縫っての戦闘。敵基地の回廊の戦いやコアへの突入。プレイヤーの没入感は高く、臨場感があふれるものだ。
・ 魅力あるデザイン。見事なカメラワーク
一人称視点であり、カメラワークは大事な部分だ。
アトラクション用に作られたギャラクシアン3のDNAを、スターブレードはゲームセンターに持ち込んだ。アーケードで楽しめるコンパクトなアトラクションだ。 スターブレードでは自機ジオ・ソードは華麗に敵基地上空や宇宙空間を舞う。
過剰にカメラが動いたり急激な視点変更は無い。大きな処理落ちも無い。 ~私は3D酔いをしやすく、過渡期のポリゴンゲームでは顕著だった。だがスターブレードで不快な体験は無い。
■ 伝説の踏襲 名作ゲームのエッセンス
Barcade, Jersey City, NJ, 8/20/11 / goodrob13
スターブレードは1983年のアタリ「STAR WARS」に骨格がよく似ている。ワイヤーフレームのゲームで今でも高い評価を受けるゲームだ。
Barcade, Jersey City, NJ, 8/20/11 / goodrob13
アタリ版スターウォーズとスターブレードに類似する部分は多い。操縦桿型のコントローラーと射撃システム。構成ではシールド制。ゲーム展開ではデススター表面での戦い、溝への突入など。
Star Wars Control Panel / tomi.kause
システム21基板ではドライブや空戦ゲームなどポリゴンの可能性を探って挑戦したようなゲームが多い。その中でスターブレードやソルバルウは既存ゲームを題材として選び、昇華した印象だ。スターブレードの場合はアタリ版スターウォーズを参考にして最新テクノロジーを投入した印象を受ける。
全体では高品位となっており、独自性が強いのは見事な制作力でさすがナムコだ。
■ 作品の最終シーン
スターブレードはレッド・アイに突入。動力炉オクトパスのパワーストーン破壊に成功する。
そしてさらなる敵大型兵器アイスバーグを破壊。そののちに宿敵コマンダーと一騎打ちとなる。破壊すると報告画面となる。
自機は僚機と共にワープ。そして母艦へ帰投する。
そののちに艦隊は宇宙空間へ進み、ナムコの文字が入って終了。 ネームエントリーとなる。
■ 移植
『スターブレード』は長く移植に恵まれていない作品だった。
STARBLADEは家庭用ゲーム機に移植されるまでは時間が架かった。アーケード版が高性能なハードで登場していたため、家庭用ゲーム機との格差が大きかったからだ。 1994年にメガCDと3DO. 1995年にはプレイステーションで「スターブレードα」が発売された。
注目度が高かったのが当時人気ハードだったプレイステーション版「スターブレードα」だ。だが背景がリアルタイムレンダリングではなく、ムービーにするなど苦心の跡が見える。 メガCD版では異なるアプローチがされた。開発はテクノソフト。ゲーム性を優先して、キャラクターはワイヤーフレームを使用している。
Wii! / alisdair
スターブレードの移植で質が高まるには、長い時間を要する。 2005年にはPS2『鉄拳5』でおまけとして収録されたが問題が残っていた。鉄拳でノルマのクリアが必要で遊びにくいのだ。
Wii / edans
なかなか良い移植に恵まれなかったが 2009年のWiiのバーチャルコンソールアーケードで「スターブレード」が登場して高評価を得た。Wiiリモコンを使っており操作性も良好だ。2013年にはiOS、2015年にはAndroid版が登場したが、こちらも複数収録されるゲームの中の一つだった。
「スターブレード」はAndroid版以降に新規移植が無い。
移植版で完成度が高いWII版やAndroid版は現在入手不可だ。気楽に遊べる現行ハードでの登場が期待される。
スターブレードは、初期に人気の盛り上げを失敗したように見受けられる。 理由は、まず最初の移植まで時間が3年もかかったこと。初期にオリジナルと落差の大きい移植作が出たことで、「スターブレード」自体の人気を失火させた印象がある。 比較すると例えばタイトーの「レイストーム」はプレイステーションの初期に、アーケード版から短期間で完成度の高い移植が出て人気となった。現在でもコンスタントに現行機への移植が出ている人気作品になっている。
■ テーマやオチのまとめ
スターブレードは後継となるアーケードゲームは出ていない。
関連作品としてはショーで公開された『スターブレード オペレーションブループラネット』があるのみだ。
ナムコの宇宙史であるUGSFシリーズに含まれているが、スターブレード自体の続編は立ち消えとなっている状態だ。
■ あとがき
現在でも多くのファンから高い評価を持つスターブレード。時代を追うごとに評価を高めている。
2013年のiOSでのナムコゲーム配信希望タイトルでは、なんとスターブレードが投票一位となった。高い人気があると分かる。
スターブレードは移植作品が少ない。それゆえオリジナルのアーケード版は孤高の存在だ。大型筐体でかつ無限遠投影の特殊な構造を持つこともあり筐体も減少する一方だ。
アーケードゲームではスターブレード登場以降に大きな変化があった。
スターブレードと同年に「ストリートファイターⅡ」が登場。大人気となり、その後は長く格闘ゲーム一色の時代が続く。 ナムコのシミュレーターのようなマニアックなゲーム、奇抜な体感ゲームは注目はされるが大多数のライトユーザーには受け入れられない。市場から直ぐに淘汰されていった。
その後は家庭用ゲーム機の性能も向上。プレイステーションではアーケード互換基板も登場しており、アーケードの優位性はほぼ無くなった。アーケードゲームの輝きも失っていったかのように見える。
現在ではアーケードゲームの人気は以前ほど高くない。 スターブレードの続編も開発途中にキャンセルされた。
それゆえ独自性の高い筐体と高性能ハードを持つスターブレードは輝きを増す。
スターブレードは他のマニアックなナムコ作品と違った。 個性は有るが完成度は高い。登場時からライトユーザーでも興味を持てる内容と難度で、幅広いユーザーに受け入れられた。そして現在も高い人気を持つ。
スターブレードは 今も星のように輝く存在だ。
文章: GIL
■ 公式動画
■ その他
■ 注釈
*2 声優では無くUSナムコの社員が担当している。
■ 参考
・Wiki スターブレード
発売年を参考にした。
・セガ セガ・アーケードゲームヒストリー | セガ
https://www.sega.jp/history/arcade/index.html
・ナムコのヒストリー | バンダイナムコエンターテインメント公式サイト
https://www.bandainamcoent.co.jp/corporate/history/namco/
・Wii バーチャルコンソールアーケード スターブレード 解説
■ 更新情報
2024年7月25日 作成