今回紹介するのは ゲーム『XEVIOUS(ゼビウス)』
ゼビウスのみを解説する 「XEVIOUS Century(ゼビウス センチュリー)」の2回目。
21世紀にゼビウスと楽しむ方法を紹介していく。
今回はアーケード版を実際にプレイしての感想と解説だ。
■ はじめに 『XEVIOUS』(ゼビウス)とは (1982)
xevious / Nicolas Esposito
ゼビウスは、1983年にナムコから発売された縦スクロールシューティングゲーム。
制作は当時若手だった遠藤雅伸氏がゲームデザインやプログラムなどを担当した。
ゼビウスはインベーダーゲーム以来の大ヒットとなる。
■ 21世紀のゼビウス
ゼビウスのアーケード版は舞台が2012年のペルーだ。だが現実では既にゲーム内設定よりも時間が過ぎた。
アーケード版登場からは40年以上がすぎている。そんな『ゼビウス』のアーケード版をプレイして感想を紹介する。
Condor / kudumomo
■ 紹介に当たって ~ オリジナルと移植作。
evious_screenshot5 / gamerscoreblog
ゼビウスは多くの移植作が有る。
だがゼビウスは完成度が高い移植まで長い年月を要したゲームだ。 大多数の移植作でアーケード版と微妙な差異が残る場合が多い。たとえば処理速度、オリジナルにあるバグの再現などだ。現在では優秀な移植やエミュレーションもあり、オリジナルに近いゼビウスがプレイ可能になっている。
移植作品の出来を比較する際に指標となるのがオリジナルの『ゼビウス』だ。 幸いなことにゼビウスは、私の知り合いで幾人かが基板を所有しておりプレイ可能だ。
発売から時間が経って自分も時代も変化した。 改めてオリジナルのゼビウスをプレイして魅力を確かめる。
■ ゼビウスは出し惜しみしない
xevious_screenshot3 / gamerscoreblog
改めてプレイして感じたこと。
ゼビウスは出し惜しみが無い。序盤から魅力を見せるように構成されている。
ゲーム開始してから短時間の間に目立つキャラクターが登場する。
普通のプレイヤーでも目を引く部分がある。エリア3では入江やナスカのコンドル。そして人目を引くバキュラ。エリア4で富裕要塞アンドア・ジェネシスが登場する。
■ 奥深さの伝搬
ギャラリーや慣れたプレイヤーを驚かせる仕掛けが有る。
エリア1から直ぐに登場する。スタート直後の隠しコピーライツは海賊版対策だが攻撃によって登場するのが面白い。 次に森を抜けると隠れキャラのソルがある。 そして直ぐに出てくる川にはエクステンドが獲得できる「スペシャルフラッグ」が仕組まれている。初めてのプレイでは出すことは出来ないだろう。しかし慣れたプレイヤーなら簡単だ。ゲーム開始直後からギャラリーに「ゼビウス」の隠されたコンテンツを見せることが可能だ。
最初はゼビウスのキレイな敵機や背景が目を引く。そしてプレイして慣れたり、他プレイヤーを観察していると見慣れた序盤の風景の中にさえ隠れたコンテンツが存在するのだ。プレイヤーは困惑そして興味を惹かれる。「このゲームには一体どんな謎が隠されているのか」と。
スペシャルフラッグは海や川に登場する。これは制作者の意図したもの。分かりやすい場所にして「スペシャルフラッグは水辺に登場する」と口コミで広がりやすいようにしたのだ。スペシャルフラッグ自体がナムコのゲームから引用されたものであり、他者に伝えるには好都合になっている。
■ 誰でも魅力に触れられる
序盤に目立つキャラクターが配置されているが、それでもプレイヤーが到達しなければ意味が無い。だがゼビウスは難度調整システムを備える。初心者でも上記エリアは短時間のうちに到達可能だ。
私も実際、ゼビウスをプレイした初日にアンドアジェネシスに到達。 『ゼビウス』自体に圧倒され、そして大変興味を持っている。 ~ 実際には上記のエリア以降に表面上は極端に目立った変化はない。 アンドアジェネシス以上の巨大敵は登場しない。敵機も種類が増えて攻撃が熾烈になるくらいだ。
『映画は掴みが大事』と言われるが、ゼビウスも序盤で魅力を上手く見せている。
■ 何度でもプレイできる
ゼビウスで大きな魅力の一つだ。何度もプレイしたくなる。楽しいのだ。
理由は大きく二つある。難度調整と初心者向けの構成だ。
1つ目は、難度変化システムにより同じエリアでも状況が異なる。何度プレイしても新鮮なのだ。
2つ目は難度調整の変化が絶妙だ。
ゼビウスは初心者向けの仕組みがある。難度が下げるのだ。まず自機損失で大きく難度ランクが低下する。また空中物が苦手でもランクは上がらない。初心者でも遊べるように作られている。 そして初心者は難度調節など知らずに調子よく進んでいき「けっこうゼビウス上手かも」と思いはじめる。 だがプレイが上手くなると、じわじわと真綿を締めるようにゲーム難度が上がっていく。 やがてクリアできるかできないかの絶妙な難度となり、ついには自機がやられる。「もう少しで避けれたのに」とプレイヤーは奮起する。 上手くなってもさらに難度が上昇していく。最終となる16エリアでは多くのプレイヤーが撃墜されるだろう。
難度が高いゲームや跳ね上がるゲームでは、理不尽さに投げ出すこともある。
それに比べて ゼビウスは難度変化が穏やかなのでプレイする気力が湧くのだ。 「今度こそ」「今日こそは」とプレイを続ける。
ゼビウスは、空中物では難度調整によりアドリブの要素がある。地上物攻略ではパターンゲームの要素もある。他のゲームであまり見られないシステムだ。難度調整によって生まれる多様性がゲームに奥行きを生んでいる。
■ 音楽の魅力
サウンドも魅力だ。
ゼビウスは制作時に「殺伐とした雰囲気を避けたい」との狙いから、独特なサウンドが導入された。
まずゲームの最初に触れるのは大きなクレジット音。当時のゲームでは随分と派手な音だ。そしてファンファーレと共に美しい景色の中をゲームはスタートする。空中物の破壊音は軽く、これも従来のゲームとは異なる。そしてブラスターの発射音、敵の破壊音は重々しくサウンドにメリハリをつける。まるでピンボールゲームのようにのように音があふれている。
■ 『面白さを求めて』
xevious_screenshot4 / gamerscoreblog
プレイに慣れてくると新たな次元へプレイヤーは向かう。
つまり先のエリアに進むこと。そして高得点の獲得だ。 また隠しキャラの制覇も視野に入るだろう。
多彩な敵の撃破、高難度の攻撃をクリアするのが目的となる。
■ 変化する敵
ゼビウスで面白いのは、敵の形状と攻撃の幅広さだ。
独特な形状や華麗な敵の動きはエリアが進行すると変化していく。ゲームにさらなる面白さを与えている。
例えば敵機。序盤は簡単な動きをするトーロイドやタルケンが登場する。 その後エリアが進行すると、発展型の敵機や新型兵器が出てくる。ゲーム内で敵の進化を見れるのだ。進化そして強化されていく敵にプレイヤーは立ち向かう。
ただ敵も単純にインフレーションしていくのではなく、攻撃力が上がると鈍足になるなどトレードオフされているのが面白い。弱点があるのだ。
例えば序盤の敵機タルケンは鋭角にターンできるが低速だ。 爆弾のザカートはテレポートできるが威力が低い。進化版のガルザカートは威力が上がる代わりにテレポートが出来ない。
■ 隠れキャラや高得点の敵を探して
ゼビウスは高得点に向けて多くの仕掛けがある。
ゼビウスの奥深さを生んでいる仕組みだ。
・隠れキャラソル
有名な隠れキャラがソルだ。隠れているだけでも面白いが高得点だ。元はブラスターのサーチ機能から生まれたアイデアだが、隠し要素を探すという楽しみを生んでいる。さらにエリアが進行すると一か所に4本や8本集まるソルがありプレイヤーの興味と高得点への意欲を掻き立てる。
・高得点の敵
単なる地上機でも高得点の個体が存在する。俗にいう一万点グロブダーだ。低得点の機体と外観は同じだが、独特な動きを見せて撃破が困難。これもプレイヤーの射幸心をあおる存在だ。*1
・高得点の方法
地上物では面白い仕組みがある。
破壊する順番で得点が異なる物がある。要塞アンドアジェネシスや連結砲台であるボザログラムなど。
さらに高難度、高得点の敵も存在する。ガルザカートに積まれているスパリオだ。花火のように爆発するガルザカートから発射する誘導弾だが得点が設定されている。 そこで誘導弾を利用する高度なテクニックが編み出された。誘導して自機の周りを周回させることが可能だ。そして敵弾に何度も着弾させて高得点を狙うのだ。 なお誘導による高得点は制作側の意図したものではなかった。 誘導弾による稼ぎを知った製作者は 後の高難易度版「スーパーゼビウス」でスパリオの得点を 上級者へのご褒美として増加させた。
■ 『プレイするたびに謎が深まる』
『プレイするたびに謎が深まる』 ゼビウスのキャッチコピーだ。
まるで進化していくような敵とプレイヤーは対峙するのだが、実はゼビウスには綿密な設定が組み込まれている。ストーリーや言語、機体設定などだ。
この時代にゲームで言語まで設定するのは異様な作りこみだ。現在でもあまり見受けられない品質だ。
■ 綿密なゲーム構成
ゼビウスは当時のゲームを否定するスタンスで始まっている。簡単に言えば理論武装だ。
ゲームの基本部分だけでも細かい設定があり、ゲームに幅や奥行きを持たせている。
・逃げる敵
大きな前提では敵機が自機の前に身を投げ出してくるのでなく、逃げるようにした。次は敵の設定。ディテールの強化だ。プレイヤーが興味を惹かれる敵のデザインや動きだが、綿密な設定がされている。プレイヤーは高難度の敵や出現ゾーンをクリアしながら更にゼビウスの奥深さにはまっていくのだ。例えば敵機。ゼビウスでは敵の種類や形状に綿密な設定がある。無人機や有人機が設定。そして系統も設定されているのだ。回転する機体であるトーロイドの発展型が高速機のジアラ。 有人機タルケンの後継機がカピと言った具合だ。有人機の最終型であるテラジは高速で攻撃、離脱して華麗な動きを見せる。ザカートは球形の爆弾のような形状をしたテレポートする兵器だが、最終形のガルザカートは能力の増大と引き換えにテレポート能力を失っている。回避行動やデザインに共通性があるのに納得できる。
・物語の創生
ゼビウスは圧倒的なクォリティーで登場した。だが映画やマンガ。他の娯楽作品と同じようにゼビウスもゼロから生れたわけではない。
例えばマンガの神様と呼ばれる手塚治虫先生。映画や海外アニメに影響されて、日本のストーリー漫画の先駆者となり開拓した。 ゼビウスではストーリーやメカデザインにSFを元にしている物が多い。例えばアニメ『伝説巨人イデオン』からもインスパイアされている。元は同じ人類同士の戦い、発光部を持つことでデザインに統一感を持たせた敵メカニック、言語や独特の名称などなどだ。同じ冨田勲監督のアニメ『機動戦士ガンダム』でもメカに系統や性能設定、独特のネーミングがあり子どもたちを夢中にさせた。ゼビウスでも同様に敵側での武器開発の背景設定がありゲームで実感できる。
これは意図されたものであり、遠藤正信氏は後にナラティブ(物語)と呼んでいる。
■ さらに深淵へと
プレイが上手になると、先のエリアに進行する。
そこでもゼビウスはプレイヤーが興味を持つシーンを用意している。
ゼビウスは古いゲームでありハードに頼った派手な演出は出来ない。動画や歌を流したりは出来ないのだ。そこで敵の動作や配置を工夫して見せている。 中盤エリアで目立つものを列挙しよう。
良く観察するとただ乱雑に敵を配置していないのが素晴らしい。
ゼビウスは緩急がつけられているのが見事だが、インターバルではまるで観光名所を巡るようにゲーム中に変わった光景が現れるのだ。
また印象が強くなる仕掛けもある。例えばナスカの地上絵には8本ソルや1万点グロブダが寄り添っている。ゼビウスは高得点ゾーンが点在することで報酬効果が生まれるのも見事なつくりだ。
■ 高度なゲームバランスと完成度。そこに生まれる緩急
ゼビウスに感じる気品。それは高い完成度によるところが大きい。
完成度を優先しているのだ。
ゼビウスで見事な部分の一つが緩急だ。それは高い完成度から生れたものでもある。
例えばアンドアジェネシスは巨大で攻撃力が高い。だがハードの制約上、登場前後には敵機を多数配置できない。
その前後の静寂が生み出すコントラストが大きな緊張と緩和を与えている。 敵の猛攻を着けるためには前後の空白は妥協する。そして空白を単なる隙間から緩急へと変えている。
例えば後の「グラディウス」では、ステージ5で生物兵器を処理落ちしてでも登場させている。完成度よりストーリー性を重視した。それは要塞の最終敵(脳)を用意していることからも分かる。
ゼビウスでは大きく処理落ちするような要素は無い。最終敵なども存在しない。
例えばエリア終盤に向けて、負荷の高い敵などやラスボスも配置できたはずだ。 完成度を優先させているのだ。
■ プレイヤーは勲章獲得を目指す。『一千万点へ』
Xevious, Centipede, Kick / greggman
ゼビウスは終わらない。
初代アーケード版ゼビウスに終焉は無い。ループゲームだ。16エリアを超えると再び8エリアに戻って以降繰り返される。当時、多くのゲームのがそうであったようにゼビウスもエンドレスでプレイが可能だ。ゼビウスが最終敵を設置していない。だが開発時に題材とされたコナミ「スクランブル」では最終目標が存在している。 制作者側としてはゼビウスが高難度であり、エンドレスでプレイできることを想定していなかったのだろう。
そこで新たな目標が生まれた。『一千万点』の獲得だ。
カウンターストップがプレイヤーの目標となる。到達するには6~7時間近くかかる。 ゼビウスが登場した頃は風営法が改正する前であり、現在よりも長時間プレイが可能だった。一千万点に挑戦しやすい環境だった。
一千万点はゼビウスのプレイヤーにとって勲章だ。面白いのは偶然にも一千万点達成を盛り上げるような現象が存在する。
例えば『無限増え』と呼ばれる現象。一千万点近くになると起きる。エクステンドが連続して発生するのだ。意図したものでは無くプログラムの限界から起きている。だが一千万点直前に起きる現象であり演出のような存在となった。 鳴り響くエクステンド音が更に『一千万点』の特異さを際立たせている。
カウンターストップは細野晴臣の12インチシングル『スーパー・ゼビウス』でも題材に使用された。曲終盤、1千万点に向かって進行して高揚感を持たせている。
昔、車の本に『男にとって車の運転が下手と言われるのは屈辱だ』と書かれていた。 誰にでもそして色んなジャンルで譲れない物や目指すもの、そして美学が有る。 ゲームプレイヤーにとっては『ゼビウスが上手い』ことは誇りだった。
■ 感想 ~ 深みへといざなうメフィストフェレス
あらためてゼビウスをプレイすると新しい発見があった。
丁寧に綿密にゲームが構築されている。初心者でも楽しめる配慮が素晴らしい。そしてプレイヤーをいざなうような仕掛けも多重に組まれている。
難解なプレイ方法や高難度にして失敗したゲームは多い。綺麗な画面に惹かれてコインを投入するが、数分と持たずにゲームオーバーとなる。あなたも興味を持ってプレイしたが「良く分からないうちにゲームが終わっていた」経験があるのではないだろうか。
ゼビウスはゲーム経験が浅いプレイヤーでも楽しめるように作られていた。
初めは数分のプレイだが、現代のゲームのように秒殺ではない。プレイヤーは好奇心を胸に、まるで冒険するように。ゼビウスのエリアをソルバルウと進んでいくのだ。
■ あとがき
xevious_screenshot1 / gamerscoreblog
「置きっぱなしのバイクに跨ると、昔みたいな気持ちになっちまう」
尾崎豊の歌だ。私にとって『ゼビウス』はそんなバイクみたいなものなのだろう。
いつでもあの頃の自分に還れる、まるでタイムマシーンだ。
ゼビウスをプレイしていつも感じることが有る。それは「美しい」という感覚。
視覚面で美しく、そして優雅だ。音楽、視覚、動作・・・全体に気品がある。軽やかに舞う敵機やエスコートに来るシオナイト、不思議な動きをみせるドモグラムなど。
ゼビウスの発表から時代は流れた。いまでは実写風景のような中で自機が動くようなようなシューティングゲームすら存在する。
ゼビウスは当時はずば抜けて美麗なグラフィックを持って登場した。
だがさすがに現代のゲームと比べると見劣りする部分もある。 しかし新しさと違う美しさがある。一見簡素な背景に銀色の敵機が配置、そして空中物が華麗に舞う姿は美しい。
そして骨格となるのがゲーム性の高さだ。難度調整に加えて高得点化の仕組みも多い。高得点の獲得だけでもプレイヤーを楽しませる度量が大きい。
ゼビウスをしているとゲームと対峙している感覚が強い時が有る。 まるで一人で詰め将棋をやっているようだ。
ゼビウスに終焉はない。
それゆえにプレイヤーは自分の決めたさまざまな遊び方や目標に向かって楽しめる。懐の広さがゼビウスの魅力だ。
文章: GIL
■ 公式動画
■ 注釈
*1 遠藤氏は俊敏で倒しにくいグロブダーを「コキフリー」と呼んでいる。
■ 参考
・WIKI https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%93%E3%82%A6%E3%82%B9
発売年度や価格などを参考にした。
■ 更新情報
2024年7月30日 作成