今回紹介するのは、映画『ナチュラル』
野球映画では有名な作品です。
ロバート・レッドフォード主演で、監督はバリー・レヴィンソン。
今作は史実を元にした部分が多いこともあり、映像だけで表現する部分が多い。~ 話やオチが分からない人も多いでしょう。
今回は不可解な部分とオチやラストシーンの解説。 一度見て分からない方向け。ネタバレと謎やオチ解説なので、知りたくない方は見ちゃダメ。
■ はじめに 『ナチュラル』(The Natura)とは (1984年)
理解を深めるために 簡単に映画の概略を紹介。
1984年制作のアメリカ映画がナチュラル。
原作は1952年のバーナード・マラマッド著作の同名小説から。タイトルは”天性の才能を持つ人”の意味がある。
スタッフと俳優は魅力がある組み合わせになっている。
監督は『レインマン』や『グッドモーニングベトナム』で有名なバリー・レヴィンソン。主演は『明日に向かって撃て!』や『スティング』他、多くの名作に出演したロバート・レッドフォード。 撮影は、前年公開された『ライトスタッフ』を担当したキャレブ・デシャネルと豪華な布陣だ。さらに有名俳優も多数出演する。
映画はメジャーリーグ50周年にリリース。米国とカナダで 4,700 万ドルを超える収益を上げた。
古い映画だが、題材はアメリカの人気スポーツのサクセスストーリーであり見やすい。ドラマは地方から出た青年が夢を追う姿と不正を行う周りとの確執だ。 野球と賭博は現在でも問題になる。
作品自体のテーマは今でも通用するし魅力がある。
● 映画のあらすじ
映画のジャンルは、スポーツもの。
そして英雄譚だ。
主人公ロイは田舎の平凡な家に育った少年。だがずば抜けた野球の才能を持つ。
ピッチャーとしてスカウトされて、野球選手になる為にネブラスカから都会へ向かう。だが事件に巻き込まれて挫折する。
その後、35歳になったロイが突如ルーキーとしてメジャーリーグに登場する。なんとバッターとして再起していた。最初はバカにされて干されるロイだが、小さなチャンスから実力を見せ始める。やがてチームをけん引する中心人物として成功していく。
■ 謎解きと解説
farm / lakshmansrikanth
わかりにくい部分を解説。
私も一回目ではオチの意味が完全には分からずに、消化不良感があった。何回か作品を見直したり、データを調べて疑問点を解決してます😃
なるだけ整合の取れる解釈をします。 ~推測部分は注釈を入れて解説。
■ 構成について
MLB Hats done Right (Road) / LandRover164
有名な史実をベースにした小説。
田舎で野球好きの純粋な少年が野球で成功する。まさにアメリカンドリームを描いている。だがこの作品の魅力は、有名なとばく事件を元にした悪との葛藤だ。
主人公ロイは自信家で天才。そして不正や圧力には断固として戦う。 魅力もある。ファンやマスコットボーイの子供にやさしくする純粋な面を持つ。そして都会で女性の誘惑に翻弄されたり弱い部分も見せる。観客は安心して感情移入して観れる。
映画版では、野球と言うジャンルでのヒーローを描く。セカンドチャンスを描いた作品でもある。
純粋な野球好きの男がメジャーリーグの中で、古い慣習や巨大な権力と戦い生き抜くかが見所だ。
■ エピソードと解説
Robert Redford / uphillblok
エピソード毎に解説。 謎は時間順に紹介。
キャラクターも不明な部分が多いので解説を入れた。
この映画は、各キャラクターの立場や経歴が不明な場合が多い。あまり深く突っ込んでないところが、この映画特有のファンタジーのような雰囲気やぼやっとした感触を生み出している。
■ 主人公 ロイ・ハブスとは
架空のキャラ。だが幾つかの有名な野球選手から創作されている。 主にメジャーリーグで、賭博の八百長に巻き込まれた選手がベースになっている。
映画ではロイが挫折してからメジャーリーグへの帰還。そして賭博の拒否、故郷への帰還など。明るい話に脚色された。
・主演 ロバート・レッドフォード
Butch Cassidy and Sundance Kid ( 1969 ) / Thank You (23 Millions+) views
主演はロバート・レッドフォード。
撮影時に47歳だが、劇中では青年から壮年期までを演じている。 ロバートレッドフォードは主人公と重なる部分が多い。 彼自身は野球の特待生としてコロラド大学に進学した。だが飲酒で中退している。
Robert Redford is kinda haunting me on this trip a little? / lolololori
ロバート・レッドフォードは俳優として目が出ずにいた。だが30代の時に映画『明日に向かって撃て!』に出演して一躍注目される。 73年にはポールニューマンと『スティング』で再び共演。アカデミー賞にノミネートされた。その後もヒット作に次々に出演して成功した。「ナチュラル」の主人公と重なる部分がある。
・元となる人物 1:ジョー・ジャクソン(人名)
[Shoeless Joe Jackson, posing as catcher, Chicago AL (baseball)] (LOC) / The Library of Congress
プロ野球選手。ロイの元になった人物と推測される。
ジョーは外野手。打率4割で、最年少記録やMVPで上位に入るなど好成績を残した。だがワールドシリーズの『ブラックソックス事件』で永久追放された。映画「フィールド・オブ・ドリームス」や原作小説『シューレス・ジョー』でも登場する。
・元となる人物 2:テッド・ウィリアムズ(人名)
プロ野球選手。MLB史上最高の左翼手とも称される。MLBで三冠王を2度獲得した。ゼッケンは9。主人公ロイも9番を使っている。
■ 主人公の元彼女 アイリス
Nebraska landscape 07-25-2012 / Richard Hurd
主人公が故郷で付き合っていた女性。主人公が街を離れる前に結婚の約束をしている。主人公が銃撃を受けて夢を挫折、失踪する。だがアイリスは再婚もせずに失踪した主人公の子をしっかり育て上げていた。
主人公を理解しながらも俯瞰して冷静に見守る女性。天使のような存在だ。さらに彼女はあげまんだ。主人公がアイリスと付き合う時機は運気が上がる。後半に主人公がメモと付き合って不調になる中で、アイリスがスタンドに現れて好調に導いた。光り輝くスタンドで経つアイリスはまるで天使のようだ。輝く帽子が天使の輪に、袖部分は天使の羽根のように見える。
彼女は謙虚だが、主人公を諭すことも有る。彼女は『人生は二つある。一つは学ぶ時期。そしてもうひとつはその後の人生よ』と伝える。非常に含蓄がある言葉だ。ロイに当てはまるのはもちろんだが、映画にでる人や私たちにも関わる。忠告や指摘、そして予言しているのだ。また野球賭博で球界を去っていった、選手たちを指しているのだろう。
映画でアイリスは、天使のようにロイを見守りそして正しい道へ導いている。
■ マックス・マーシー
Kodak Six-20-Art-Deco / Nik Clark
新聞記者。主人公を追う、解説する役目だ。
主人公を好意を持って追いかけているように見えるが、主人公に蛇蝎のごとく嫌われている。主人公に何度もボールをぶつけられている。
マックスも上手く使えていないキャラだ。
多分マックスは主人公につきまとう面白キャラとして作られている。だが俳優がロバート・デュヴァルだ。『地獄の黙示録』のキルゴア中佐のイメージが強すぎて、良い人にもギャグ担当にも見えないのが残念だ。
実際の「ブラックソックス事件」では、賭博を明るみにしたのは記者だ。 だが映画のマックスは現実と異なって賭博をしており、怪しい男ガスを主人公に紹介する。つまり展開を進めるための埋め合わせ用人員だ。彼もまたピンボケなキャラで、単なる変な人になっている。
上手く使えば、観客や大衆視点で主人公を応援できるキャラにも出来るのに勿体無い存在だ。例えば映画『ライトスタッフ』のラストで、”ホットッグ”ゴードン・クーバーを見守る記者や神父のようになれたはずだ。
Newspaper pile / Valerie Everett
■ 最初の対決 ~ワマー
Nebraska train tracks / samirluther
主人公は、汽車の中で出会ったワマーと対決することになる。
ワマーはベーブルースがイメージ元。主人公のロイの元であるジョージャクソンにルースは打撃スタイルの影響を受けている。
映画では二人を投打に分けることで直接対決する。ロイの勝利は、ジョーが上回っていると暗示するような構成だ。なおこの対決前には謎の女性バードがワマーを追っていた。だが勝利した主人公を見て、追跡対象を主人公に切り替えている。現実ではルースは選手として成功の道を歩む。そしてジョージャクソンはスキャンダルで破滅する。 映画ではロイ=ジョーは悪魔に魅入られたと表現しているような展開だ。
Babe Ruth 003 / rchdj10
■ 謎の女 ハリエット・バード(バーバラ・ハーシー)
Revolver / trawin
謎の女。主人公をホテルで銃撃する女だ。
動機は不明だが、当初はワマーを追っていた。映画公開当時には定義する言葉が無かったため存在が分かりにくいキャラだが、いまなら「ストーカー」だ。
主人公が野原でワマーと野球対決する際に、女は相手バッターのワナーに付きまとっている。 後に主人公を銃撃した後に自殺していると判明。生い立ちや狙撃や自殺理由も不明だ。
彼女も作中で上手く機能していない。それゆえ単に主人公に年齢を重ねさせるための仕掛け。もしくは後に主人公を脅迫する素材になっている程度に見受けられる。映画内の役割では、主人公を誘惑して負の面に落とす最初のキャラだ。~もう少し立ち位置がはっきりすると、主人公に試練を与えるキャラとして機能するのに惜しい。
映画の流れから推測すると、彼女は誘惑に落ちた人間を破滅に導く悪魔のような存在。天使のようなアイリスと対になっている。
・元となる事件
1949年。フィリーズのエディ・ウェイトカスは試合後にホテルに戻り、ストーカーの女性に銃撃を受けた。彼女は熱狂的なファンだった。事件後彼女は精神病院に収容される。なおウェイトカスは回復して、次シーズンで活躍した。
1932年。カブスの遊撃手ビリー・ジャージェスは住んでいたシカゴのホテルで元恋人に射殺された。
■ 女 - メモ・パリス
監督の姪。謎の男ハブスと付き合っている。並行して主人公を誘惑する。
主人公に幸運を呼び寄せるバットのワンダーボーイ、同じく幸運を呼ぶ主人公の元彼女アイリスと反発するキャラだ。叔父に「不運を呼び寄せる」と言われるほどの”さげまん”だ。簡単に言えばスターウォーズにおけるダークサイド側だ。
彼女はかなり理解しにくい。
まず立ち位置が不明だ。終盤までハブスに送り込まれたのか、私的に好きなのか分からない。また古い映画でよく見かけるキャラづくりで、若くてパニックを起こしやすい性格だ。それゆえ行動が支離滅裂。立場が分からない上に性格も危ないキャラになっている。
彼女はまだ若くて虚勢を張っているが、心では主人公をとても好きなのだろう。だが映画ではうまく表現できていない。
・謎の言葉「前に会った」
劇中で主人公がメモに対して「前に会った」と謎めいたセリフを言う。この映画の不思議さに沿うセリフだ。
私の推測:セリフや制作側の意図が不明だが、銃撃した女と本質を重ねているのかも。 つまり銃撃した女の過去に相当する役目のキャラだ。野球を憎むもしくは野球で成功するものを恨んでいる女性だ。
■ 主人公に賭ける人物 :ガスサンズ
Baseball / newyorkcitypeoples
彼も何者かはっきりしない人物だ。
分かるのは、記者マックスの知り合いで金持ちだ。そして野球賭博を行っている。後半にはナイツのオーナーと賭博していると明らかになる。
立場や行動も理解できないキャラだ。
例えば、主人公と出会った頃は主人公に賭けてひいきにしている。 だがなぜか運気を下げる女を主人公に近づける、もしくは交際を黙認している。 賭け対象がロイ以外に転々としている可能性はあるが、良く分からない部分だ。
ガスは登場時のインパクトはかなり強い。不思議な能力を見せており、主人公の手持ち金額をほぼ当てた。主人公の幸運に対抗するような力だ。
しっかり立場を説明すれば、ファウストを誘惑するメフィストフェレスに相当するような存在感を出せたはず。もしくは球界に群がる悪として主人公の対抗軸として描けたはず。 だが作中では、ガスの存在は希薄で行動や背景も見せない。ふわふわしたキャラの一人になっている。
Mephisto Pencil Holder / debrazer
■ 判事 /オーナー
Newspaper sunny yellow / NS Newsflash
主人公のいるチーム、ナイツのオーナー。明るいところが怖いなど、初対面で主人公にいじめられて面白みがある雰囲気だ。だが実は主人公を悪の道に誘うキャラだ。スターウォーズの皇帝に相当するようなラスボスになっている。
分かりにくいキャラだ。球団オーナーが不正をしているようにも見えるし、元は賭博師で球団乗っ取りを企んでるようにも受け取れる。
判事が悪の理由は、球団内で監督と賭けをしている。そして自チームが負けるほうに賭けている。賭けの条件はチームが負けると所有権が判事になる。そして終盤、主人公に大金を出して賭けへの協力を強要ぢて悪へ誘う。自チームを手に入れる為にふがいない監督と運営権を賭けるのは分かりやすい。 だが判事は球団外部の男とも賭博をしており単なる悪になっている。
さらに現実を知ると混乱しやすいキャラだ。
なぜなら現実の「ブラックソックス事件」では、世間からオーナーが悪玉。判事が事件を整理しており、球界の救世主と認識されている。 ~だが映画ではなぜかオーナーと判事が一緒になっている。そのため現実の事件を知っていると、映画内の善悪が混乱しやすい。
■ バットボーイのボビー・サヴォイ
主人公になついている少年。序盤に、主人公と一緒にバットを作る。
主人公の後継ぎのようであり、主人公が去っても才能を継ぐ。そして球界のその後に期待を持たせる存在だ。
・バットの由来
サボイ スペシャルは 1930 年代のビールのブランドで、米国醸造会社によって製造されていた。
■ 舞台 ~ ロケ地
Farm / carnorlar
作品で登場する場所の解説。ロケ地など。
■ 球団 ナイツ
主人公が入団するニューヨークの球団。
主人公の事件からは16年後の1939年になっている。最下位で苦戦しており、冴えない選手ばかりだ。主人公とともに運気が上昇。勝利し始める。
語感から、同じニューヨークのチーム「メッツ」に掛けているのかも知れない。
■ 球場
Baseball / newyorkcitypeoples
球場は、平凡な外観を求めて全米から探されている。そして野球シーンの多くは、ニューヨーク州バッファローのウォー メモリアル スタジアムで1983 年に撮影された。同球場は1937 年に建設されて、1988 年に取り壊されている。
・アウェイの球場
バッファローにあるオールハイスタジアムは、重要なシーンでシカゴのリグレー・フィールドの代わりになった。
・時計の破壊
ホッブズがホームランでスコアボードの時計を破ったシーン。1946年5月30日にボストン・ブレーブスのバマ・ローウェルがエベッツ・フィールドのスコアボードの時計を破壊したエピソードからインスパイアされた。
■ 転機 - 産婦人科へ緊急入院 ~ 主人公の再生と誕生。
baby / Yuchao.L
パーティーで倒れた主人公は、病院に搬送される。
そこはなんと産婦人科。みょうにほっこりする状況だ。だが展開では区切りとなる意味があるシーンだ。私が推測した2点を紹介しよう。
1. 主人公が球界に復帰する、再び誕生する為の場所。
映画でクライマックス前に訪れる大きな試練だ。主人公がどう立ち上がるか試すシーンだ。まず医者はロイに野球を辞めることを宣告する。 そして悪側の女性メモも野球を辞めることを提言する。しかしロイは拒否する。
以前は誘惑に負けだ。だが今度は違う。チームメイトとの絆、そして恋人の再会で主人公は変わった。主人公は自分の意思で悪の誘惑を拒否したのだ。
すると主人公の体からは、かって”間違った行動”から受けた銃弾が取り出される。 結果として主人公から厄が落ちた・もしくは災難が抜け落ちたような演出だ。悪は去った。主人公はもう一度ここで善として誕生するのだ。
2 失った時間を取り戻しはじめる、最初の舞台。
16年前にロイは故郷を出て自分の息子の誕生に立ち会ってない。 だが16年後に恋人アイリスと産婦人科で一緒になる。二人は新しい生命が生まれる場所の雰囲気と喜びを共有しているのだ。
■ 銀の弾丸と謎の食物 ~ 主人公の成長を試す試金石か?
silver bullet / eschipul
産婦人科に入院する前に、ひとつアクシデントがある。
それはパーティーでのこと。メモが主人公に何かを食べさせる。直後に主人公は倒れるのだ。これは16年前にロイが謎の女に弾丸を受けて倒れた事件を彷彿させる。
次の産婦人科のシーンでは弾丸が取り出される。まるでメモが弾丸を主人公に食べさせた・入れたように見える。時間を混乱させるような作りで一見すると演出意図が分かりにくい。
だが流れを観察すると面白い構成になっている。 観客からはメモと銃撃した女性が同一もしくは循環しているように錯覚する。浮気や女遊び・不純な恋愛をすると主人公が罰を受けるのだ。 つまり入院シーンでは再び悪によって主人公が倒されたように見える。
・銀の弾丸(シルバーバレット)
ロイの銃撃にはなぜか銀の弾丸が使われている。 妙に意味深なアイテムだ。
銃撃した女が奇妙だと感じる印象と、今作がファンタジーになる印象を増幅している。
銀の弾丸だが、西洋では怪物退治に銀を使う信仰がある。 映画などでも悪魔や怪物を倒すのに銀の弾丸が使われる。 悪の道にそれて怪物になるロイを女が倒したようにも見える。
■ 終盤
Comiskey Park Home Plate, "Chicago Black Sox" Scandal / Chicago Crime Scenes
終盤は不調となったナイツの勝利が目標となる。3試合連続で負けて、1ゲームのプレイオフが設定された。
主人公は残りの野球人生を捨ててでも試合に出ようとする。
■ 野球賭博が主人公に迫る。
ロイは試合への復帰を望むが、不穏な状況となる。野球賭博が主人公を巻き込むのだ。主人公をオーナーが買収する。そして他に中心人物が買収されていると通告される。
・元となる事件 ~ ブラックソックス事件
[Joe Jackson, Cleveland AL (baseball)] (LOC) / The Library of Congress
元となったのは実際に起きた事件だ。 1919年メジャーリーグのワールドシリーズで発生した。新聞が暴露して賭博が発覚。ホワイトソックスの選手8人が刑事告訴された。選手は刑事責任は免れた。しかし新たに誕生したコミッショナーにより選手たちは球界から永久追放された。
映画とはやや異なり、経費を出さないオーナーの仕打ちに対して選手が八百長に手を染めたといわれる。ブラックソックス事件のきっかけを作ったと言えるオーナーは処分をまぬかれて後に殿堂入りする等の名誉を受けた。 それゆえ世間には処分を受けたメンバー達への同情が集まり「アンラッキーエイト」と呼ばれる。後に映画や小説の題材にもなった。 「フィールド・オブ・ドリームス」でも扱われている。
■ クライマックス
Lightning 1. / Tim @ Photovisions Nebraska
一気に多くの仕掛けや謎が収束そして解決していく。
やや分かりにくい部分を解説する。
1. 買収されているのは誰か。
Baseball / Snapmann
ゲーム中、主人公はタイムを取りピッチャーに詰め寄る。
ふがいないピッチャーに憤る、だがピッチャーに「お前こそしっかり当てろよ」と返される。 そう。ピッチャーが買収されているのだ。チームの雰囲気は最悪だ。
だがその後は気持ちを入れ替えてピッチャーは踏ん張る。失点0に抑えながらゲームは続く。
2. 主人公に渡された手紙の内容は?
手紙に書かれていた言葉は不明だ。 だがアイリスの子供が主人公の子供だったと書かれていたのは明白だ。主人公が奮起する起爆剤となった。
3. 最後のバット「SABOY SPECIAL」
#Thunder / EKIN4891
バットボーイであるサヴォイの持ち物。
主人公が入団初期に、サヴォイと一緒に作ったバットが「サヴォイ・スペシャル」だ。このバットも幸運を呼び寄せるアイテムだ。
落雷を受けた木で作ったバットが、再び落雷の中で砕けるのは上手く伏線が効いており自然な流れだ。この記事の序盤でバット「ワンダーボーイ」が神話の剣を想像されると書いた。 さらに映画のクライマックスは劇的な構成だ。バット(剣)が再び破壊されて、新たなバット(剣)を呼び寄せる。 ここが面白いのはアーサー王の越話にも似ていることだ。アーサーは2本の剣カリブヌスとエクスカリバーを使った。2本目の剣が別の人(神話では湖の乙女)に渡って鍛え直されていた構成も似ている。
そして興味深いのは主人公ロイの資質。 作品序盤で自宅の木が落雷で真っ二つになった。~ 普通なら不運と感じるだろう。だがロイは木をバットに変える。ロイは不運を幸運に替えたのだ。 そして終盤ではオーナーの悪の誘惑を断ち切り、体の故障を迎える逆境の中。再び自分で作った「サヴォイ・スペシャル」で、試合や自分の運気の流れを変えるのが面白い。 そしてバットは既に子どもの持ち物であり、サヴォイによって伝説が続くことを想像できるのも観客には痛快ではないか。
4. 破壊される照明。
遂に試合は9回裏。スコアは2-0、二人が出塁。ピッチャーとの激戦が続き最高に盛り上がる。
主人公は特大ホームランを打つ。 球は照明に激突。連鎖して照明が火花を拭いて破壊されていく。
映画「ナチュラル」は、撮影をキャレブ・デシャネルが担当した。彼は映画『ライトスタッフ』でも印象に残るシーンを作った。主要キャラであるグレンが搭乗した宇宙船フレンドシップ7のシーンだ。地球周回時に窮地に陥るグレンに、地上でアボリジニが火を焚き炎が舞い上がる。まるで祈りと火花をが届いたように宇宙船の周りを宇宙ボタルが舞う。 『ナチュラル』ではグラウンドに火花が舞い落ちる中を主人公がゆっくりと掛けていく。幻想的でかつ美しいシーンとなった。
● 作品の最終シーン
シーンは唐突に切り替わる。畑の中で主人公がにこやかにキャッチボールをしているシーンとなる。
小説や元となった事件では選手たちは破滅。もしくは不幸になった。
だが映画「ナチュラル」は違う。素敵なラストとなった。
主人公は賭博を拒否。チームを勝利に導いた。そしてナイツの監督も憧れていた田舎の農場に戻る。
■ テーマとオチのまとめ
恋人アイリスが言ったように、主人公は故郷を出てからは学ぶ時期だった。
そして成長して最後は勝利した。大切なことは、主人公が旅をする中で誘惑と悪を断ち切った。さらに逆境や校長の中でも、野球好きな子どもたちを大切にする純粋さは失わなかった。それは幼い頃の夢を守り続けた・自分自身を大切にしたと言える。
主人公のその後は描かれていない。そう、アイリスが言ってたように『その後の人生』となったのだ。 ロイは長く離れていた故郷へ帰った。そして、子どもと妻も手に入れた。遠回りした時期もあったが、素晴らしい人生を手に入れたのだ。
アメリカ人や男性が憧れる、幸せで正統派のエンディングになっている。
■ あとがき
I had dinner with Robert Redford / Global X
ナチュラルは不思議な雰囲気を残している映画だ。
話の骨格は英雄譚だ。アーサー王伝説やオデュッセイアとの類似点は多い。そして大まかな流れは映画で多いパターンだ。ダメチームが一人の人間で変わり始める。
私は最初、この映画を『がんばれベアーズ』や『プリティリーグ』のようなギャグもの、もしくは『フィールド・オブ・ドリームス』のようなファンタジーものと先入観を持って見始めた。それゆえ見ていて、着地地点が読めずにそれなりにハラハラして視聴した。
だがナチュラルでは多くの情報が盛り込まれている。史実を交えて説得力も持たせている。反面、余り説明しない部分も多い。さらにはギャグも有り、銃撃や賭博など深刻なエピソードもある。 だが要素が詰め込まれているのに、なぜか破たんしていない。
・映画ナチュラルの楽しみ方
「ナチュラル」の見方だが、実はハートフルコメディとして見るのが正しいはずだ。
私が映画「ナチュラル」を見始めて思った感想。それは映画『天国から来たチャンピオン(1978年)』に展開がそっくりなこと。
天国から来たチャンピオンのあらすじは、事故死した才能ある主人公が老人としてよみがえり、再び夢を追う。最初は周囲にバカにされながらも、やがて信頼を得てチームを成功に導いていく。そして一人の女性が主人公に惹かれる・・・・。主人公の死にかかわるサスペンスの軸もある。
ナチュラルと話の骨格が良く似ている。『天国から来たチャンピオン』からインスパイアされて、野球版としてリメイクしたと考えると、映画『ナチュラル』の優しくてそして不思議な雰囲気も納得できる。
・不思議な雰囲気を楽しもう
映画『ナチュラル』では深刻な話題が多くてリアル路線の映画にも見える。だがシンプルにコメディとして視聴すると楽しい。夢見て都会に行って浮気した青年が成長して彼女の元に戻っていく。実にシンプルなほのぼのとした作品になっている。
史実やコメディのバランスが危ういが、なぜか映画として破たんしてない。
魑魅魍魎がうずまくメジャーリーグのなかで、純粋さを貫く主人公。そして周りがひきつけられていく。映画『ナチュラル』は綺麗な映像もあって、不思議な魅力がある作品になっている。
毎日の生活で疲れた時に、ふっと見たくなる映画。それが「ナチュラル」だ。
Nebraska 1985 / Gruenemann
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■ 映画
メディアではブルーレイ、そして4K版も登場している。
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■ 配信
• Amazonプライム
*2022年10月時点では有料。
• Amazonプライムビデオ
> 映画ナチュラル
■ 音楽
2014年にサントラが限定盤として発売されている。
・ サントラ
■ データ
Netflixで吹き替えと字幕版を視聴。
■ 公式動画
■ 参考
・Wiki アンラッキーエイト
■ 更新情報
2024年3月26日 転機の項目を追加した。球場を場所、ロケ地の項目を追加して移動。CSS使用して見易くした。
2022年10月28日 作成