今回は、マルチメディア・プレイヤー JRiver「Media Center 29」の解説。 人気ソフトで、音楽用にはハイレゾ再生に対応してアプコンも搭載する。
長い歴史を持ち、評価も良い統合再生ソフト。今回は最新バージョンの特長と性能、そして使った感想を紹介。
「JRiver Media Center 29」はパソコン対応のメディアプレイヤー。 米国JRiver社が発売してWindows,Mac,OS X,Linux用がある。MCやJRMC等とも呼ばれる。1998年に前身のMedia Jukeboxがリリースされ、2003年にMedia Centerへ改名した。なんと20年以上の歴史を持つ。
統合型ソフトで多用途型。音楽,動画,画像,ネット配信サービスやSNSも対応する。多機能,高性能であり、再生能力やタグ編集機能も強い。 音楽性能に力が入っており、オーディオファンに評価が高い。
■ 最新版29について 日本国内では「MC29」を株式会社DEE iCAT事業部が6月28日に発表し、7月1日より販売を開始した。「28」発売から8か月となり、早めのメジャーバージョンアップだ。「29」自体は今年1月24日にリリースされており、数日おきの活発なアップデートがされる。
主な更新は、DSPと動画レンダラーの機能拡張、改善。
全体では「28」から期間が開いてない為、控えめの更新だ。
● 機能追加・改善例 [AUDIO関連] • DSPエンジンの機能追加、改善および修正 • アクティブスピーカーの対応改善 • パラメトリックイコライザーの機能追加 • ユーザー選択可能なオールパスフィルターを追加 • ユーザー定義のカスタムバイクアッドフィルター • オーディオコンバーターのレイテンシーと入力から再生までのレイテンシーの表示 • 最大32チャンネルのTempo&Pitch DSP搭載 [VIDEO関連] • JRVR(JRiver Video Renderer)ビデオレンダラーの機能拡張 • これまでLinux、Mac版に搭載されていたJRVR(JRiver Video Renderer)を新たにWindows版に搭載し、Windows、Linux、Macのプラットフォームで一貫したビデオエクスペリエンスを提供 • 動画品質、パフォーマンス、および互換性の全面的な改善 • ドルビービジョンプロファイル5のサポート • プロファイル7および8でのドルビービジョンメタデータのサポートにより、HDR10画像を強化と品質向上 • 効率/スケーラビリティの改善によりローエンドのマシンでも、ビデオを快適に再生 • 統合グラフィックス(iGPU)のパフォーマンスを向上させるゼロコピーハードウェアデコード Windows用の体験版を使用。主に音楽と動画の再生・対応力をチェックする。64bit版をインストール。
全体の使用感と変化を確認した。そしてバージョン「28」から、「29」までに更新された部分を詳細にチェックする。面白い部分や魅力に感じる部分を紹介する。
歴史のあるソフトで、外観やGUIは完成している。
統合プレイヤーだが、音楽用途が強化される。旧名が「ジュークボックス」である流れを受け継ぎ、大量の音楽を多彩な方法や自動再生するのに向いている。
私が感じる特長を3つ紹介。 1. 外観と操作 ライブラリ型と呼ばれる統合ソフト。現代で主流のデザインであり馴染みやすい。 動作速度は「25」から大分向上しており、早くかつ安定している。
『29』では外観に変化は無い。 MediaCenterの特徴は情報量が多い。情報窓にアルバムアートやスペクトラムアナライザー、ビットレートが表示されるなど。音楽再生では、曲名リストに小さいアルバムアートがサムネイル表示されるので便利だ。
操作画面の配置や表示は細かく調整出来て、1~3列&行表示も可能。またカスタムした表示設定の保存もできる。 デザインはスキンに対応しており合計14種の綺麗なテーマが用意される。サイトから追加も可能。
標準ビューの画面構成 ・左列 (ツリー):ライブラリでメディアのジャンル,サービス,プレイリスト等。 ・上段 (ヘッダ):メニュー,操作,情報と動作パネル。 ・右側 (主窓):曲リストやブラウザがタブ表示可能
■ 多彩な再生方法やモード [画像] アルバムアート表示からのリスト表示。再生も可能。 音楽再生は簡単。 初回起動時に、曲を自動でインポートして形式やジャンル,アーティスト等に分類する。そしてプレイリスト再生やフォルダツリーからの再生も可能。動的に分類されて、更新頻度の指定も可能。 独自機能[スマートリスト]では、メディアの種類や使用状況から細かく分類可能だ。用途や好みに応じて曲を再生できる。
● 再生モード [画像] シアターモードと動画再生 再生画面は大きく分けて4種類。標準,ミニプレイヤーやフルスクリーンとシアタービューが選択可能。シアタービューは大画面モニターやテレビでの操作用。
そして[オーディオ専用モード]も備える。音楽関係以外の機能を切り離して、利便性向上と高音質化が可能だ。音楽用途に特化したいユーザーには心強い。
全体の音質は良好。Win用音楽プレイヤーでは上位ランクだ。 私が最新版「29」を使った印象だが、「28」と同じに感じた。これは悪い意味ではない。Ver.27~28で音質が大きく改善された。音質や画質は現在主流のプレイヤー内でほぼ上限の性能になっており、私が「29」の差異をとらえられないだけだ。
Jriver Mediacenterは、高音実だ。そして明快ではっきりした音。音質はやや硬めて、少し高音が目立つ。音場と音像は明確だ。細かい音も聞こえて、そして崩れない。押しが強く、迫力があるのでAV用途にも向く音質だ。
標準設定でも、実用に耐える音質だ。 既定出力はダイレクトサウンドなので、かすかにノイズっぽい。そのためWASAPIやASIO等に変更すると良い。
MediaCenterは、AV用途と兼用する人に便利だ。マルチスピーカーやDSP設定も多く、細かい調整が可能だ。
● リアルタイム・ハイレゾ化や音楽ファイル再生 [画像] スペアナでハイレゾ領域を確認しているところ アップサンプリング再生が可能。精度はDACの上限までアップコンバート可能。そしてCD音質のFlacやWAV,ハイレゾ音源もアップコンバートできる。内部動作は規定で64Bit化されて処理される。
MP3,FLAC,ハイレゾ,WAV主流形式をリアルタイムでアプコン再生したが、簡単に再生する。音の遅延等は無くて正確に再生可能でかつ安定している。 機能では人気が有る「SOXリサンプラー」にも対応する。ただしJRiver「Media Center 28」以降では、基本の音質自体が向上しており、もはや不要に感じた。
外部出力をVSTのスペアナで確認した。アプコン化での周波数上限は音声のFlac,ハイレゾのFlacでは50KHzまで拡張している。MP3やAACの圧縮コーデックなどでは20kHzまでだった。 動画はMP4では22kHzまで。
3. 多彩な機能 メディア対応も多い。動画,静止画,ドキュメント,ネット放送や動画等。JRiver Media Centerのみでファイル再生や管理できる。
例えば、気が向いたときにVODやストリーミング、Youtubeが使える。タブを用意して簡単に切り替えることが可能だ。他ブラウザや専用アプリへの切り替えは不要だ。
[画像] Prime Musicを再生 ディスクや各種形式の再生と使用感。 DVDディスク再生: アクセス速度や機能は普通。
BDディスク再生 : 他アプリとの連携が必要で有料のANY DVD HD,DVD Fabが推奨される。なおPowerDVDは未対応。
動画再生 : 主流形式に対応。フィルタのダウンロードは自動。
ネット動画再生 :YotubeやPodcast等の大手サイトでストリーミング再生に対応。
[画像] YOUTUBE動画を再生 ネット動画やVODの再生では、現在は内蔵ブラウザーがEDGEとなり実用レベルになった。高音質で再生速度も速い。
[画像] YOUTUBE動画を再生 基本操作や特殊な部分の対処方法を紹介。 ● インストールと使用 [画像] インストール中の画面 今回の『29』も、Windows版は32bit版と64bit版が登場した。 インストール作業には難しい部分は無くて、日本語化も可能。
MediaCenterを以前に使用していた場合は、自動で検出。設定が引き継がれる。
■ 基本操作 JRiver Media Centerはライブラリ型。ファイル登録してから編集や再生をする。編集データはMedia Center側で保存され、元データに影響は与えない。
• 音楽ファイルの追加・再生方法 基本はプレイリストでの再生となるが、別方法でも可能。音楽ファイル追加は以下の通り。
方法1. 初回起動時に自動インポートされる。
方法2. ドラッグ&ドロップ対応。曲をリストにドロップで追加。
方法3. フォルダツリーから、音楽フォルダを開いて再生も可能。
■ 高音質化や高速・高画質化 おすすめ設定 • 再生デバイスを変える、高音質化機能を利用する方法 設定ボタン(シークバー横のイコライザー風ボタン) > 再生オプション
▼ オーディオデバイス
> ダイレクトサウンド → 対応機器や出力を変更可能。WASAPI等。
▼ 設定
・メモリー再生 [規定 オフ]=オンにする。曲を予めメモリーに読込み可能。
• アップサンプリングする、高解像度化する ➤ [DSP出力設定] >[DSPスタジオ] = サンプルレートから出力値を選択する。DAC性能に応じて高解像度化が可能。
なおアップサンプリング利用には、Windows側でDACの周波数設定を予め利用したい周波数以上へ変更する必要がある。*設定値が低い場合は、再生時に警告画面が表示される。
• 高画質化する ~ madVRビデオレンダラーを使用する [画像] madVRを利用しているところ 高画質で人気が高いmadVRビデオレンダラーが簡単に利用可能だ。
[HQレッドオクトーバ]を高品質モードにしている場合、 madVRを使用する。
[画像] madVRの設定例 オプション>ビデオ > ビデオの全般設定 >ビデオモード: ✔ HQレッドオクトーバを選択する。 = 下段項目に[madVR設定を開始]が追加表示される →✔ONにする。
→ MadVRの導入方法詳細はこちらのページで紹介した。
http://analog-to-digital.seesaa.net/article/483606848.html ■ Media Centerの長短所 ● 良いところ • デザインがこなれている、スキン変更も可能 • 多機能・高性能・高音質 • 安定している • 多数の媒体、ファイル形式に対応する • 細かい設定ができる • サウンドデバイスに設定できる● 気になる所、注意点 • 有料。安くはない。ただしマイナーアップデートは無料。 • 一部コンテンツが海外サイト。例:Amazonが米国 • BD再生には別途有料アプリが要る。 • インストールファイルが大きい。 • 現時点では「29」はやや不安定。 ダウンロードは公式や日本取り扱い店から可能。CD-ROM付属版もあり通販から購入可能。 なおベクターでは26以降が未発売だ。
■ ライセンス 継続使用にはライセンスを購入する。Amazon等で発売中。
ライセンスは全OS共通の「マスターライセンス」、OS毎のライセンス、そしてアップグレード版とCD-ROM付属版が有る。
● マスターライセンス CD-ROM版 複数台のPCやOSで使用可能な スーパー・ライセンス。
Windows, Mac OSX,Linux版すべてのプラットホームで動作する。Windowsなど単一OSで、複数台のPCへのインストールも可能でリストア回数も年間20回。なお「26」から大手通販にダウンロード版は無く、CD-ROM版のみになっているようだ。
> アップグレード版
● ライセンス 各OS専用 (Windows,Linux Ubuntu,mac)ダウンロード版 ・ダウンロード版 統合ページ(Windows,Linux Ubuntu,mac版を選択)
・ Win ダウンロード版
> アップグレード ダウンロード版
・MAC ダウンロード版
■ CD-ROM版 ソフトウエアが収録されるCDが付属するタイプ。
・ Windows版 ライセンス&ソフトウェア
> Mac用
> LINUX用
音質: 92点
画質:85点
動作:80点
総合面:90点
お勧め点: 一本のソフトで、色んなメディアを再生や管理したい場合に強い。
音楽再生が主体の方に向いている。 PCの中級者が気楽に音楽を楽しみたい方にお勧め。
動画再生で利点は多い。ファイル管理がしやすいのと高音質な強みが、JRiver MediaCenteにはある。
■ 感想 JRiver MediaCenterは、私がWindowsの音楽プレイヤーで、トップと感じるソフトだ。
他ソフトに比べると音質面や速度等で劣る場合も有る。だが統合プレイヤーとしての使い勝手、価格。そして音質との総合面で見るならJriver Mediacenterがナンバー1だと感じる。 またあらゆる媒体を、JRiver MediaCenter経由で高音質化できるのは大きな強みだ。
JRiver MediaCenteは、音楽主体の統合プレイヤーで進化を続ける稀有な存在だ。
今回の「29」だが、正直なところ進化が分かりにくい。DSPやビデオフィルターの改善などに力が入れられており、特殊な環境やマニアックな使い勝手や改善を待つユーザー向けの更新だと感じた。また今回はリリース直後ということもあり、やや不安定な部分が有った。
ただしバージョン「27~28」で機能や音質や動画再生機能が大きく改善されているため、「27」以前のバージョンを使っているユーザならアップデートする価値が有るだろう。
多くのユーザーで主力の音楽プレイヤーとして活躍するはずだ。
■ 注意事項 ➤
ウェブサイトのご利用条件 ■ 試聴機器、テスト用アルバム
使用バージョン : JRiver Media Center 290017 64bit版
• ACER Core i7搭載機:SSD化し、メモリーは16GB、HDD増設。電源を強化。
Win10 21H1
• FOSTEX ヘッドホン T20RPmk2n
• YAMAHA NS-10M PRO, Pioneer SP-A4
■ 試聴アルバム
• カルミナ・ブラーナ / CDと配信ハイレゾ版
• マイケルジャクソン - BAD , DANGEROUS / CDと配信ハイレゾ版
• QUEEN WORKS,Greatest hitsong1 / ハイレゾ版
• SKE48「あの日のチャイムを忘れない」/ CD・DVD
• 乃木坂46 今が思い出になるまで / ハイレゾ版
• 乃木坂46 「Actuality」
■ 更新情報
2022年3月29日(火) 作成 使用バージョン Ver28.0.63
■ 関連データ
・ JRiver社について。 1981年設立された米ミネアポリスの会社。エンドユーザーおよび企業パートナー向けにネットワーク化されたメディアソリューションを構築する。 製品には、オーディオおよびビデオコンテンツのストリーミング、ダウンロード、サブスクリプション、ポータブルデバイスサポート、P2P、DLNA、およびDRMが含まれる。
■ 関連記事
•
Windows用の音楽プレイヤー対決 2020年版。使いやすくて高音質なソフトは?[有名、マイナーソフト対決]] •
[2017年2月更新☆] Windows用の音楽再生ソフト対決。使いやすくて高音質なソフトは? [有名、マイナーソフト対決] ■ 参考、関連リンク
• 公式
JRiver ■ Tips 便利な機能や操作の解説。トラブルのFAQ
・既定以外のサイトやお気に入りページを追加する方法。
例えばAmazon musicやYoutubeのお気に入りサイトが利用出来る。= 左列の[ストリーミング]項目を右クリック。[WEBサイトを追加]を選択してURLを入力する。
・JRiver Media Centerのオーディオエンジンで音源をリアルタイム再生。 オーディオを再生するとJriverのオーディオエンジンを経由して、サウンドカードに贈られる。
もしくはASIOのラインイン経由でJriverのオーディオエンジンを経由してサウンドカードで再生
ファイル>ライブ開始。>WASAPIかASIOを選択。
・JRiver Media CenterをWindowsのサウンドドライバーとして使う。 他アプリでの再生に、JRiver Media Centerを使える。例えばブラウザーや音楽・動画アプリ等の音声をJRiver Media Center経由で再生可能だ。
1. JRiver Media Center 設定>オプション>全般>機能
>WDMドライバー → ✔ONにする。
2. Windowsの設定 > サウンドデバイス = [JRiver MediaCenter]を選択。
3. 使用はJRiver Media Centerを起動後に、利用したいアプリを起動する。
~ 特定のアプリで音が出ない場合の対処法
Windowsの設定 > サウンドデバイス > アプリと音量の設定 = マスターと各アプリの出力を[JRiver MediaCenter]に設定する。
・MediaCenterが未対応の音声・動画ファイルを再生する Windowsのエクスプローラー上で、再生したいファイルを右クリック > プログラムから開く > Jriver Media Centerを選択
~必要なコンポーネントが追加される。以降はMediaCenterへのファイル追加や再生が可能になる。
・ 動画再生で音声が出ない 排他モードをオフにする。
オプション>オーディオ>デバイスの設定 >デバイスを吐いたアクセスモードで起動 →オフへ
・ ブラウジングや動画再生の高速化 - 内部ブラウザーを変える ブラウジングや動画再生の改善は、内部動作ブラウザの変更で改善可能。ただし未対応サイトが増えるなど不具合の可能性もある。
設定>オプション>ツリーと表示>Webブラウザー >エンジン:EDGE(規定) → Chromium。IE11に変更が可能。