Amazonがオリジナルドラマ『CIA分析官 ジャック・ライアン』のシーズン2を配信開始した。
今回はシーズン2を全話見た感想と、簡単なあらすじや見所を紹介。 ~ 若干ネタバレに近い解説を含むので、知りたくない方は見ちゃダメです。
■ トム・クランシー『CIA分析官 ジャック・ライアン』とは
原題は「Tom Clancy’s Jack Ryan」。 アマゾン制作で日本では11月1日からシーズン2を配信開始。プライム会員は無料視聴可能。
トムクランシーの小説が原作。ジャック・ライアンが主人公で、初のドラマシリーズ化が『CIA分析官 ジャック・ライアン』で、今シーズンは全8話。
➤ トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン
● あらすじ
Venezuela / RNW.org
ジャック・ライアンがCIAで活躍し始めた頃を描いた前シーズンの続きとなる。
主人公ジャックが、ベネズエラに向かう謎の密輸船を調べるために軍隊時代の恩人であるジミー・モレノ議員と共に現地へ向かう。そこへかっての上司グリーアも合流する。 ベネズエラでは、現大統領レイエスと大統領候補グローリア・ボナルデが対立していた。 現地でモレノ議員を爆殺されたジャックは真相を暴くために奔走する。
RBG Containers / Matt Henry photos
■ 全話を見た感想
イマイチだった。
ストーリー部分の仕掛けや展開が不自然で、前作より大きくパワーダウンしている。ロケやセットが豪華で見るには耐えるが、話の骨格や登場人物の心情が理解しがたくて視聴中はずっと不満を持った。第7~8話でやっと盛り上がる。
■ 作品の要素毎の解説。
● 話作り、構成について
話の概要をざっくりいうと、ジャックが不審なコンテナの謎を追ううちにベネズエラが大混乱に陥る。 全体に構成が雑だ。そしてドラマ部分が少なくて、シーズン1の後半と同様に話が進むにつれて枝葉が増えている。見たい部分である陰謀の謎解きや脅威の探索が、期待値を下回る、そして他国の政治レースや主張に力が入れられており、本筋から離れていく違和感が最後まで続いた。
サイドストーリーも弱い。 米TVドラマで多い「平行に複数人物の話が進む構成」だがどのエピソードも盛り上がらない。謎の船の追跡から始まり、軍事会社エプリウスやはぐれ殺し屋マックスとの戦い,大統領と候補の対立。 素材は良いが、不自然な展開と各人物の動機や背景が弱くて感情移入できないので興味が無くなる。 さらに肝心のジャックが主導のストーリー部分が面白くない。ジャックが状況を悪化させる場面が多いため、次第に邪魔に感じだす。
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進行でCIAと敵側も浅はかな行動をする場面が多い。 CIA側は失策や体調不良で犯人に攻撃される、逃走されるの繰り返し。主要人物のジャックと上司グリーアが交互にミスして状況を悪化させる。
また展開で強引な部分も目につく。例えばジャック達の不手際で拉致されたメンバーが大統領府に移送されるのは、後半のアクション用でこじつけ感が有る。また終盤でお粗末なCIA職員のために、米大使が軍艦とブラックホークをいきなり手配して他国へ投入するのも異様だった。実際のベネズエラ空軍はフランカーやMi-28など強力な戦力を持っている。また作中では大統領側が人工衛星で森に居るCIA工作員を発見できる能力を有するのに、CIAの手配ヘリが捕虜を救出した上に大統領府までたやすく侵入できるのは幼稚な展開だ。
ジャック達のミスや駆け引きの失敗が積み重なり、ベネズエラは混沌としてCIAも大損害を受ける。 それでも命令無視の単独行動を続けるジャックに唖然とする。
Container / sabishiiseishun
そして話の核となる謎解きの部分が弱い。まずジャックが追っていたタンカーから繋がる謎の正体は、希少な資源だが作中で利益や影響の解説が乏しい上に、話が広がらないので話の興味を惹くアイテムの役割を無くしている。まだ大きな仕掛けが有るかと期待して視聴していたが、ジャック達の失策で状況が悪化するだけだった。
制作側の焦点はジャックが大統領の反対派への虐待や傲慢ぶりを暴いた、と描きたいのかもしれない。 ~ しかし収容所での政治犯発見はCIAメンバーによる不手際の多い救出作戦の副産物で偶然だ。犠牲や被害が多いし、CIAが大統領府で銃撃して一般人を巻き込みながら警備を虐殺しているのが台無しにしている。『特効野郎Aチーム』でももっとスマートにやるだろう。 アメリカ人や一部の民主主義を掲げる被害者を救うためなら自分たちの欺瞞や無礼さは無視して、他国に何をしても良い・犠牲は知らないという傲慢さが良く出ている。 ベトナム戦争のきっかけとなるトンキン湾の隠ぺいや湾岸戦争でのナイラ証言のようなでまかせだ。
そして黒幕を自信満々で摘発するジャック。 黒幕たちがジャック達を上手く処理できない無能さも気になるし、案件を極端に大げさにしてアメリカやイギリス,ベネズエラを破綻へ巻き込んだジャック達も同様にCIAエージェント失格だ。
面白くなりそうな素材を扱っているのに、謎の関係性が弱いうえに展開が強引で肉離れしており残念だ。
● キャラクター
主人公のライアンがありがちな、アクション映画で多いキャラになった。 例えば、序盤で彼女がいるのに出張先で謎の女に引っかかる安っぽい展開。正体不明の女を信用して振り回される。 そして自己中で単独暴走して仲間や他国機関に迷惑かけまくり。最後はコネを使い米の軍事力で押し切る。 前半には役立たずなのに終盤でスーパーヒーローのように暴れだすのも奇妙で、展開に合わせて強さが変化してご都合主義に感じる。
またアクションシーンでは米側の武装や動員数が貧弱なのにも関わらず、敵側の被害比率が極端に大きい。まるで西部劇のようだ。 私の中ではジャック・ライアンは賢いヒーローのイメージだが、今作では破たんしている。『ランボー』なら構わないが『ジャックライアン』作品として考えるとお粗末だろう。
まわりの登場人物も魅力が無い。シーズン1ではわき役やゲストに魅力ある人物が多かったが、今回は視聴者に好かれにくい・自己中でわがままな人物がほとんどを占めている。 またシーズン1でも気になったが、視聴者の目を引く対象である女性と子どもの描き方が下手で興味が持てない。例えばドイツ女性のハリエットやマックスの娘など素性は面白いのに、不快な行動が多くて「別に居なくても良いのに」と感じた。
興味を持てたキャラがいても、結局は裏切って惨めな退場をしていくので、観ていてテンションが下がる。例えば首席補佐官ウバリは、おさななじみの大統領を助けようと忠告したり頑張るので活躍に期待したら、あっけない末期にがっかりした。
良かった人物では、CIAベネズエラ支局長のノーベンバーが光っていた。 ミスが多いうえに暴走するジャックをずっとサポートするのは、出来の悪い息子を信じる親のようで可愛かった。
また秘密工作員たちも、ぼやきながらも作戦を実行する・仲間を救出しにいくのは男気が有り楽しい。そしてマティスがカッコよかった。レギュラーの風格があるのに、まさかの退場で残念だった。
■ 総評とこれからへの期待
総評 43点。
観終わった感想は「映画並みのクオリティで凄いね。でも面白くない」
全体にシーズン1での悪いところが強化された印象だ。CIAのレベルが低い、話が脱線して枝葉が増える、各キャラのドラマが弱い、ご都合主義など。
『CIA分析官 ジャック・ライアン』のシーズン2は、話の仕掛けや内容の薄さからするに全1~3話でまとまる内容だ。 映像が派手で穴埋めされるがストーリーは盛り上がらす、何よりキャラに魅力が無い。 制作でベネズエラ情勢や希少資源を素材にしたが、CIAと関連付けられない上に、まとめ方か思いつかないので「ただジャックを暴れさせた」ように見える。
AmazonプライムはVODの中でもシェアが高くて独自作品に豊富な予算を投入しているが、誤ればNHKの大河や紅白と同じで魅力もない・人気も取れない作品を作ってるだけとなる。ならば会員費を値下げしたほうが良い、と言われかねないだろう。
私はシーズン1が面白く感じてシーズン2を楽しみにしていたぶん、余計に不満を感じた。サードシーズンの制作は既に決まってるようだが、パワーアップを期待する。
■ 作品リンク
• CIA分析官 ジャック・ライアン
■ 関連用品
• [ハミルトン] HAMILTON 腕時計 カーキフィールドオートクロノ H71626735 メンズ
ジャックが使うハミルトンの腕時計。劇中で結構目立つので気になる存在です。全体が黒のクロノ、ラバーストラップで精悍な印象。。
■ ジャックライアンとは
ジャック・ライアンシリーズは80年代に原作小説が発表された。軍事シミュレーションを扱う小説の先駆けとなる。政治や国家の問題を上手く組み込み話題となる。
「レッド・オクトーバーを追え!」、「パトリオット・ゲーム」、「今そこにある危機」、「エージェント : ライアン」などのジャック・ライアンシリーズ最新作が『CIA分析官 ジャック・ライアン』。
■ 公式動画
■ 更新情報
2019年11月3日 作成
■ 参考、関連リンク
• Amazonプライムビデオ
> トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン
・ ハミルトン 『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』シーズン2が、ハミルトンの時計とともに帰ってくる!
参考: Amazonプライム