
今回紹介するのは、映画『U・ボート』
潜水艦映画で有名であり、人気が高い作品です。
さて今作は、Uボート側からの視点で語られており説明不足の部分も多い。
今回は『U・ボート』の見どころと不可解な部分の解説。
一度見て分からない方向け。ネタバレと謎やオチ解説もあるので知りたくない方は見ちゃダメ。
■ はじめに 映画『U・ボート』とは

原題はDas Boot。1981年の映画でウォルフガング・ペーターゼンが監督する。
原作者が、実際に従軍記者としてU・ボートに乗った経験を元に作られた。
監督は、後に「ネバーエンディングストーリー」「エアフォース・ワン」や「トロイ」などヒット作を多く手掛けた。また「パーフェクトストーム」や「ポセイドン」など海洋の舞台も得意だ。
1997年に『U・ボート』ディレクターズカット版が公開された。
■ 映画のあらすじ
映画のジャンルは戦争映画。
第2次世界大戦でドイツ軍Uボート「U96」と連合軍の戦いを描く。
U96は、大西洋の連合軍船団への攻撃が主な任務だ。船団護衛の駆逐艦と戦う。
そして後半は、ジブラルタル海峡突破をめざす。艦体損傷による沈没の恐怖と復帰が見どころだ。
■ 謎解きと解説

作品はUボート側の一人称視点であり、説明が省かれている。さらに、Uボートの行動や登場機体の説明もないので分かりにくい。
疑問に感じやすい装備や場面を紹介する。
■ エピソードと解説

人物や謎の物体、作品中で解説されていない設定を解説する。
またメディアの特典やメイキング等から、私が面白いと思ったものを抜粋した。
■ 登場アイテム
・ Uボート (U-96)

Uボートは、ドイツ語ではウーボート。Unterseeboot(水の下の船)の略。
U96は原作者が実際に乗った艦。UボートはVIIC型で、626隻が竣工したうちの一隻。 VIIC型はドイツ潜水艦隊の主力として大西洋で活躍した。 水中航続距離は4ktで80海里(148㎞)/2ktで240海里。主機であるディーゼルエンジン2基と電動モーターが組み合される。主に水上ではディーゼルで、水中ではモーターを使う。作中ではモーターは”E機関”と呼ばれる。
元となったU-96は、1940年8月1日に進水。1945年2月15日に退役。練習艦となるが、1945年に米軍の攻撃で沈没した。
作中では実物大模型や、撮影用の艦橋や艦内セットが組まれた。なお模型はレイダース/失われたアーク《聖櫃》でも使用されたのは有名だ。
・ Uボートのマーク「笑うソードフィッシュ」

Uボートの司令塔に描かれているマークが「笑うソードフィッシュ(カジキ)」だ。 ~ネットではノコギリザメ、ノコギリエイとも書かれている。隊員の帽子にもシルエットでマークがついている。
・ 大量のレモン

Lemons / CocteauBoy
作中で印象深いのが、船員たちが大量のレモンを食べることだ。
これは病気対策であり、主に壊血病の防止策だ。 ~長い船内生活でのビタミン不足による壊血病はかって恐ろしい病気だった。大航海時代に多くの船乗りが命を落としている。細胞が破壊されるので体や精神を病んでしまう恐ろしい病気を、レモンの摂取で防いでいる。
・ Uボートカクテル
作中で登場するカクテル。レモンとコンデンスミルクを混ぜて作られた。 他のメンバーが呆れた顔で見ているので、実際にあるレシピではなく「ネタ」でしょう。なんだかファミレスでカルピスを作る裏技のようだ。
■ 謎のシーン、分かりにくい行動など。

軍事に詳しくないと分かりにくい設定がある。また映画特有の演出もあるので解説する。
・ 弱いUボート

作品を見て感じるのが、”Uボートが弱い”ことだ。
主役が華々しく活躍する映画ではない。映画予告では、Uボートが勇壮な音楽に合わせて格好よく描かれる。~だが作中では連合軍の駆逐艦に追い回されて潜んだり、飛行機に攻撃されるなど劣勢だ。
これはUボートが既に弱くなった時期を描いたから。2次大戦の終盤には、連合軍のUボート対策が進んでUボートの優位性は下がった。連合側の艦隊による護衛 そして技術面ではレーダーやソナー探知が進んでいた。 浮上すればレーダー、潜行すればソナー探知が待っていた。
・ 赤い電球
戦闘に入って照明を赤に切り替えるシーンがある。これは監視に備えて目をならす(暗順応)させるため。
・ 海峡前。イタリア船での豪華な食事

Gibraltar / martin_vmorris
海峡突破前。イタリア船に上官たちが招かれて豪華な食事で接待される。
大量の肉と海鮮やフルーツ。そしてお酒がふるまわれる。商戦の艦長はやたらご機嫌でUボート艦長をもてなす。
連合軍の厳戒な監視下であるジブラルタル海峡を、Uボートで突破する無茶な行動に、興奮している。もしくは無謀な作戦の挑戦者達へ、最後の晩餐をふるまっているようにも見える。
・ ジブラルタル海峡突破。
かなり困難な行動だ。
なぜなら海峡幅は11㎞と狭いうえに、英軍の地中海唯一の修理基地がある。警戒は厳重で哨戒機も飛んでいる。
・ なぜUボートは浮上して海峡に近づいたのか。

Gibraltar / dennisikeller
船長はUボートで海峡に近づいてから、潜航する予定だった。それは大西洋から地中海へと向かう海流に乗って燃料を節約するため。 しかし敵の索敵能力が上回っており、潜航前に攻撃される。
・ 航空機の攻撃でUボート沈没

Sinking of Germany Uboat / San Diego Air & Space Museum Archives
実際の英軍機は、1940年からレーダーを搭載している。
作中では、航空機がU96を攻撃する。 Uボートは舵が破壊されてエンジンも故障。そして配管が壊れて浮上できなくなる。
Uボートの潜航深度は230m、圧壊深度は250~295m。作中ではメーターは260mをはるかに振り切ってしまう。
・ 飛ぶボルト

Bolts / wwward0
有名な演出だ。船体が水圧に耐えれず、ボルトが銃弾のように吹き飛ぶ。 なお実際の潜水艦ではボルトは溶接されている。
■ ラストとオチの解説

作品のラスト。戦闘機の攻撃をUボート乗組員が受ける。 そして、語り部以外の主要人物はほぼ全滅する。
助かったと思ったら、悲劇で終わる。戦争映画の結末で多いパターンを踏襲している。
■ テーマとオチのまとめ

Das Boot - München / pixel0908
敗戦国側を視点に作った映画であり、Uボートを賛美したりや乗組員を英雄としては扱えなかったのだろう。戦争賛美にならないように悲惨な結末で終わる。
■ あとがき

潜水艦を主題に扱う映画は、面白い作品が多い。だがUボートの面白さは抜き出ている。
制作時期はCGが無い時代であり、実写撮影が多くて迫力が有る。さらにUボート側のみの視点で描かれるなど、緊迫感を挙げる仕掛けも見事です。日常の描き方も丁寧で、艦内に生活感が凄くあふれいる。バナナやパイナップルが吊るされているのに親近感が湧いて面白かった。
ふっと思い出して、猛烈に見たくなる映画のひとつです。
■ 関連商品
媒体や関連製品
■ 映画
● U・ボート ディレクターズ・カット [Blu-ray]
ブルーレイの高画質で見られる。
■ DVD
■ 配信
• Amazonプライムビデオ
■ TV版
1985年に公開されたTVシリーズ。
・Uボート ザ・シリーズ 深海の狼 (2018)
映画版Uボートの続編と宣伝されている。
2018年から制作されているTVシリーズだ。実際には、新造Uボート「U612」の話であり、映画版とのつながりはない。簡単に言えばUボートを題材にしたテレビドラマだ。
実際に見た感想だが、TV版にありがちな間延び感が大きい。また無駄な残虐シーンや暴行シーンがあり不愉快だった。さらにテーマも無くて、面白くはなかった。
■ 音楽
音楽はクラウス・ドルディンガー 。
映画『Uボート』のウォルフガング監督とは『ネバーエンディング・ストーリー 』でも組んでいる。軽快で上昇していくような雰囲気が似ている。
『Uボート』では、オーケストラとソナー音との組み合わせが印象に残る。「U96のテーマ」など、高揚感のある音楽がカッコいい。
・Das Boot: Original Filmmusik
クラウス・ドルディンガー 形式: CD
30曲入りバージョン。4曲目の「U96」がカッコいい。後半はセリフ入りの音楽が入っている。
・Uボート オリジナル・サウンドトラック
Lothar-Günther Buchheim 形式: CD
18曲入りバージョン。ジャケットは実際のUボートを映した写真が使われている。
■ トイ
• タルガ 鋼密度模型Uボート U-96

全長46cmの大型モデル。内部も再現されている。
■ 更新情報
2023年6月20日 文章調整。画像追加。
2022年8月30日 Uボート ザ・シリーズ 深海の狼を追加。
2021年8月27日 画像位置調整。
2019年7月19日 作成