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今回紹介するのは、映画「南極料理人」
作品はコメディですが、主人公の口数が少ないので分かりにくい部分が有る。
そこで今回は「南極料理人」の不可解な部分やラストシーンの解説。
一度見て分からない方向け。ネタバレやオチ解説を含むので知りたくない人は見ちゃダメ。
■ はじめに ~ 南極料理人とは

映画の情報や概略を紹介。
『南極料理人』は2009年の映画。
主役は堺雅人で、『クライマーズハイ』や『篤姫』に出演していたころ。
原作は、西村淳の『面白南極料理人』と『面白南極料理人 笑う食卓』。
● TV 『面白南極料理人』について
2019年にTV大阪が『面白南極料理人』をTVドラマ化したが、映画版とは関係が無い。
■ 映画のあらすじ
映画のジャンルはコメディ&ドキュメント。
南極基地での苦労を、食事を中心に描く。舞台が制限されたシュチュエーション・コメディでもある。
● あらすじ
舞台は日本のドームフジ基地。ドームフジ基地は沿岸に近い昭和やみずほ,あすか基地と比べて極地に近い。ペンギンやアザラシも居ない過酷な場所だ。 主人公のは海上保安庁のコックで堺雅人が演じる。 隊員は全8人で、南極観測へ望んできた者や左遷同様に扱われ嫌々来た者などさまざま。
過酷な環境の中で、隊員達は仲間や離れた家族との不和を乗り越えていく。 西村は欠員の穴埋めで着任したが、美味しい食事を提供しようと奮闘。一人の人間が飲み食いする量は1トン弱。 西村の料理がやがて隊員達を繋いでいく。 そして西村は、料理には美味しいだけでなく大事なものがあると気付く。
■ 作品を深読み ~ 謎解きと解説

設定や分かりにくいシーンを解説。
時間順に紹介。
■ 舞台 ~ なぜやたら食べるのか

NASA on The Commons
舞台は-70度にもなる南極基地。
そして隊員がいつもお腹を空かせてる。これは寒さで体力の消費が激しいため空腹になるから。夜中に調理室に忍び入りラーメンを盗み食いしたり、バターを生で食べる隊員まで出てしまう。
■ 隊員間に緊張感があるのはなぜ?
作品に流れる妙な違和感。メンバーの雰囲気は何か不自然。遊びや休憩をしていても、上辺だけで心底楽しんでるようには見えない。極度に気を使い、怒ったりしません。
矢口監督が得意なコントのような絶妙な間だが、極限の環境で直ぐに壊れそうな人間関係にも見える。ジャンルが違うが、同じ南極を舞台とした『遊星からの物体X』のように、いきなり誰かが暴れそうな不安が漂う。
■ 一緒に食事をする意味
さまざまなメンバーで仕事も違うが、三度の食事は一緒。過酷な環境の中で食事を一緒にする行為がメンバーを繋いでいる。
破るのはラーメンのシーン。念願のラーメンが完成し、待ちきれないメンバーは「伸びるから」と外出してる観測員より先に食べる。料理が冷めるのを平気だったメンバーが、暖かい食事を大事にするように変化した。
■ 料理の否定と復讐
● 誕生日にステーキ

Steak / adactio
西村は、雪氷学者の本さんに誕生日のごちそうを用意することになった。 西村が、仕事中に本さんにリクエストを聴く「俺は食べるために南極に来てるわけじゃない」と言われる。~ これはキツイ。西村に”食事は何でもいい=西村は居なくてもいい”と言ってるようなもの。
西村はめげずに、ステーキの制作に挑戦する。分厚い肉が上手く焼けないので、ドクターが西村と一緒に、屋外で肉をサラダ油で燃やす。隊員達も料理に興味がないわけではなく、しっかり手伝う。
西村は、分厚く美味しいステーキを作り見返す。 そして本さんも西村に近づいて一緒にビールを飲んでる時に弁明をする。『家族を放ってまで南極に来ている』と話しており、仕事への情熱が分かる。
● 西村の気持ち ~西村が料理を作る意味

#telefono #telephone #olddevices / flegido
西村は、寡黙で内面が見えない。堺雅人が得意な、薄く笑って気持ちが見えない演技です。しかし幾つかのシーンから内面が分かる。
西村は料理に関しては口を開く。特に印象深いのは、南極基地と日本を繋ぐ電話のシーン。西村は、電話相手が自分の娘と気付かず懸命に話す。西村は相談で「父親が単身赴任で家族の元気が無い」と聴いてくる娘にご飯を作ることを勧める。 娘は真意が分からずに不機嫌な顔で問い返すが、西村は『美味しいものを食べると元気が出る』と伝える。
この時点の西村は、料理を作ることが母親のような愛情になってる。 料理を作る理由が分からない娘が『父が料理を作る目的は愛情』と気付いて笑顔に変わる。素敵なシーンです。
■ メニュー解説
作品中には、かなりインパクトのある食事が登場した。
• 巨大エビフライ

イセエビ / kagawa_ymg
伊勢エビのフライ。なかなかのインパクトだ。確かに言葉だけ聞くと美味しそう。
前の観測隊が残していった伊勢エビが存在すると知った隊員達は【エビフライ】をリクエストする。西村はコックとしてフライを否定するが、「僕達の心は完全にエビフライだからね」という隊員の気迫に西村は負ける。これも母親が駄々をこねる子供の期待に応えるようなものでしょう。しかし隊員達は巨大な伊勢エビのフライを食べて「やっぱり刺身の方が良かったな」と悔やむ。
• ラーメンへの挑戦 ~ 隊員と西村の勝利

ttanabe
大きなトラブル。隊員達の盗み食いで即席ラーメンの在庫が枯渇し、生で作るにも材料の「かん水」が無い。ラーメン好きの主任がふさぎ込んで「俺の体はラーメンで出来ている」と言い出す始末。観測が滞り隊員たちは頭を抱える。
ここは、不愛想に見える学者の本さんが助け船をだす。西村にベーキングパウダーと塩水でかん水を作る方法を提案。西村はラーメンを完成させる。隊長は研究よりラーメンが大事だと言い、メンバーも同意して食べる。過酷な生活での窮地を救いました。
なお南極観測時による早期のラーメン在庫切れは、実際に発生した状況だそうです。 ~ まあ寒い場所で、時間もたくさんある。ラーメン食べたくなりますよね。
■ 南極での終盤 - 母親化する西村。
最後の食事シーン。映画最初の食事シーンで『誰も話さず黙々と食べてる』のと比べ随分と変わった。
西村はかっぽう着姿で他隊員のジャージをはいて、母親化してる。 隊員も変わった。配膳を手伝い「新聞読むな」「しょうゆ回して」と食事を大事にしており、すっかり和気あいあいとしてます。
■ 「上手い」と言わないメンバー
作品を見ていて気付くのは、誰も「うまい」「美味しい」と言わない。これは、作品のテーマに関わる仕掛けでしょう。
料理が中心の作品なのにコックの西村には残酷。しかし西村も結構キツイ言葉を言っており、お互い様な部分が有る。
例えば、酒を飲みながらドクターが「帰ったらマラソンに出る」と夢を語るのに西村は「暇だね」と返答。 美味しいと言わない隊員たちも問題はあるが、人にとって大事な言葉はそれぞれ。西村もこの時点では他人を思いやれない。
そして隊員達は、口には出さないが、イベントでスーツを着て食事したり、おにぎりを食べるために雪原を走ったりと食事を楽しみにしている。
• 油だらけの唐揚げで愛情を知る

唐揚げ / Koji Horaguchi
過去に西村は、自宅で奥さんが作った『油でべちゃべちゃの唐揚げ』を否定した。妻は一所懸命作ってるが、西村は不満を言ったのだ。 ~その後、西村が食事を作らなくなったため、南極隊員達は自力で『油だらけの唐揚げ』を作る。
西村は人間味の欠けるコックだったが、南極で『料理の技術より大事なこと』に気づき涙を流す。 がんばって料理を作った妻の愛情と隊員たちの優しさを分かるまでに成長した。
■ 愛情表現の違い。 実は優しい妻と娘。
かなり悪態をつく妻と娘だが”ツンデレ”です。
妻は、西村が南極に行ってからふさぎ込んでる。 娘も南極に行く前は父を蹴ったりしてたが、父が南極に行った後はファクスを送り、父と話せるイベントにはしっかり行く。 日本に西村が帰ってからは娘も優しくなり、ラストは家族で動物園も行きました。そして母娘は遠回しに西村が誕生会に出るようにねだる。やはり父が大切で表現も愛情もいろいろと分かる。
● 作品のラスト、オチ
終盤で、南極から日本の日常に戻った西村は「南極に行って何か変わったのだろうか?」と自分に問いかける。
変化は有った。単身赴任から帰った西村に家族は少し優しくなり、一緒に過ごす時間も増えた。
そして大きなのは内面の変化。 ラストで家族と遊園地でハンバーガーを買う。西村は苦手な油だらけの照り焼きバーガーを食べるか迷う。娘は「うまい」と言いながら食べてる。西村は気を取り直して、バーガーを口に入れて「うまい」と言いオチ。
料理自体の味にこだわっていた西村が変わった。 作品のテーマである「みんなで食べるご飯は美味しい」を表現している。

Mekkjp
■ 感想

料理が題材の映画は面白いものが多いが、「南極料理人」もなかなかの作品。
当たり前だけど普段忘れがちなこと。
『食事は楽しく。みんなで一緒に食べよう』と教えられました。
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■ 映画
● 豪華版
2013年に発売。メイキングや試写会の様子、レシピカードなどの特典が付属。
● 通常版
■ 書籍
• 面白南極料理人
原作。kindle版もあり。
■ 音楽
• 南極料理人 サントラ
ユニコーンのキーボーディスト阿部義晴が担当。
> MP3版
• 尾崎豊 - 17歳の地図
サボった隊員がシャワーシーンで熱唱してる歌「僕が僕であるために」収録。
■ 参考、関連サイト
■ 更新情報
2018年2月18日作成
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