■ ECHOESの作品解説。 全アルバム、映像の解説。+経歴や作品背景紹介。

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 こんにちは。

 私は、音楽ジャンルのなかでも一番聴くのはロック。
そして日本のアーティストで”ECHOES”は特に聴きました。CDを初め著作もほぼ全部持ってます。

ECHOESは文学性の高い歌詞とシャープな音で独自性の高いバンド。 1989年に解散するが、2011年に再結成。その後は解散宣言が出ておらず”現在進行形のバンド”です。

今回は、ECHOESの経歴と作品についての情報。アルバムの時代背景や解説。聴いた感想を紹介します。


■ ECHOESとは 


バンドスコア ECHOES BEST OF BEST (バンド・スコア)

 音楽を聴くには、時代背景の理解が大事ですよね。
ECHOES作品を親しめるように経歴をざっと紹介します。

● メンバー構成

元のバンドは、辻と今川の二人で始めたクォークから。
残りのメンバ-はオーディションで選ばれて結成。


辻仁成(ボーカル、ギター)
伊藤浩樹(ギター)
伊黒俊彦(ベース)
今川勉(ドラムス)





● 歴史 音楽活動開始 ~ 現在

NO Kidding

 創立の経緯は、辻仁成のインタビューによるとパンクブームが終わり、時代がややワンパターンになってきた頃で『新しい音楽を作りたかった』とのこと。

 ECHOESはCBSソニーのオーディションで最優秀賞を獲得します。
1985年4月21日 プロデビューとなるアルバムとシングルが同時発売。


ロックバンドの間でエコーズの評価は高かったが、なかなか人気は出なかった。しかし「JACK」を境に人気が徐々に上昇。

1989年 シングル「ZOO」がヒット。その頃にボーカルの辻がすばる文学賞を受賞する。しかしアルバム『EGGS』を出して武道館ライブ後に解散。
解散理由は、以前からメンバーの体調不良などもあり何度も解散の危機があったようです。引き留め役の辻仁成が「小説活動に力を入れたい」と言ったことをきっかけに解散に至りました。

2000年12月28日 一夜のみの再結成。
2001年 辻と伊藤で『ECHOES OF YOUTH』を結成。シングルは3枚発売。

2011年 福島を応援するため、オリジナルメンバーで再結成。
2012年 ライブを実施




 ● 音楽性について

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 音楽性は、重くシャープでエッジが効いている印象。
曲の雰囲気は、U2やアラームに似て重く硬く、そして尖っています。

 特徴があるのは歌詞。かってロックと言えば不良のもので、流行したバンドの音や歌詞は大げさすぎたり暴力性があった。ほぼ同期の尾崎豊でも、やや不良少年寄りの歌詞です。しかしECHOESの場合は、社会と馴染めない少年少女達を等身大で描いた。

『化粧してどこかへ出かていく母、仕事ばかりで家をかえりみない父。不登校となり孤独な時間』など。今の定義ならネグレクトやいじめで、時代より遥か先にコミュニケーションを取れない少年達を題材としている。例えば後の「エバンゲリオン」など、今ではアニメや漫画でも当たり前になった表現ですが、ECHOESは80年代には存在しない珍しいテーマを扱い、孤独な少年少女に焦点を当てている。

路上 (河出文庫 505A)

文学表現も魅力。初期の曲だとジャック・ケルアックの『路上』から名前を引用した「JACK」、コクトーの小説から題を引用した「恐るべき子供達へ」等の、外国の街角に暮らすような雰囲気と繊細な描写が得意。 アルバム『Goodby Gentle Land』まで異国の雰囲気は続きます。後にロックバンド活動が題材のストレートな曲も出るが、アルバム『EGGS』では東京を舞台として、現代に問題提起する新しい世界観に挑戦。文学性の高さは続いた。

サウンドは基本がシンプルな音で、楽器やシンセサイザーも少なめ。そして現代で流行する音圧が高い録音と異なり、エコーズのCDはダイナミックレンジが広く高音質です。それ故あまり時代に左右されず、今聞いても古さは感じません。

時代を超えて、音と歌詞に魅力があるバンドです。


On the Road, Wild West / faungg's photos




■ 作品解説と購入用リンク


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 ECHOESの作品を紹介していきます。


■ 目次と、見出し - ジャンルについて

 発売順に紹介。
音楽、映像作品をほぼ集めています。古くて流通してないものは省きました。

(ジャンルをクリックすると、項目へジャンプします)

 CDアルバム

 CDベスト盤

 CDシングル

 CDライブアルバム


 映像 DVD,ブルーレイ 

 書籍



● 購入用リンクの使い方 

 製品の特長と購入用リンクを紹介します。

商品写真と横の商品名リンクは、基本としてamazonへのリンクです。
なお他のネット通販販売品を見たい場合は、
○○で検索をクリックすると、通販サイト内からの検索結果を表示します。

■ アルバムCD 


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 アルバムCDを紹介していきます。発売順に並べました。
エコーズの曲調が変わる前期、中期、後期に分類。

なお商品バージョンは、初期版→再発→廉価版→紙ジャケット版が発売されています。


● 前期 1-4作目  


 初期4作品。
世界観が似ており、外国の街角にいるような雰囲気と暗いSF小説のような重々しさを持つ。そして自身を内省と無感動で制御する、クールな少年が歌う感じが強い。

 現在でも通用する内容です。
 


・ WELCOME TO THE LOST CHILD CLUB(1985年4月21日発売)

WELCOME TO THE LOST CHILD CLUB

 デビューアルバム。
プロデューサーは井上鑑。

ジャケットアートは、手を差し伸べあう影絵。孤独な少年少女を題材とする内容に調和する。初期の帯に書かれたキャッチコピーは「諦めてしまう前に俺たちと組まないか?」

全体は”問題に対して声を上げ始める。愛を求めはじめる気持ち”を歌う。

収録曲は「レプリカの街から」のシャープなギターで始まる。異国の街頭で、周りにあふれる疑問に少年が立ち上がり声をあげる雰囲気。
「ヒューマニズムにがまんできない」では辻の朗読と街頭の音から始まる。
「BadMornig」は鮮烈。電話を掛ける音から始まり、両親に構われず孤独な少年の気持ちを歌う。団地で景色を眺め、学校にも馴染めず嘘で繕う。今でもインパクトが有り深刻な曲です。シングルカットもされた。

「恐るべき子供たちへ」は、フランスの詩人ジャン・コクトーの小説を引用したタイトル。”諦めてしまう前に俺たちと組まないか?”と語り掛け一曲目につながる曲調。似た境遇の仲間達へ、手を組もうと語りかけてアルバムを締める。

初期エコーズの幕開けを飾る作品で、シャープな音と異国での孤独な少年少女を題材とする。エコーズの主張と井上鑑の綺麗な音作りがぶつかり、凡庸さに陥らずに絶妙な緊張感と綺麗さを持つ。
 
シンプルな音と研ぎ澄まされた歌詞に迫力があって、今聴いても良いアルバム。






・HEART EDGE(1986年6月1日発売)

HEART EDGE(紙ジャケット仕様)

  2作目。ハートエッジ。

ジャケットは当時の流行デザインで、レイアウトが凝っておりメンバーも小さく写る。かなりポップ寄りです。

しかしアルバム内容は良い。テーマやサウンドも、ほぼ前作を引き継いだ内容で正常進化している。 今回は、前作で扱った問題に対しての経過で、戦い始めた少年少女の持つ『戸惑う、解決しようとする気持ち』が主題。

シャープなギターと切れのいいドラムから始まる「カッティング・エッジ」は一曲目にふさわしく期待感を盛り上げ、仲間たちに新しく始めようと強く歌いかけます。
「メモリアルパークのチャーリーブラウン」ではありふれた少年たちが発する”SOS”に、気付いて欲しいと訴える。「アフタースクールコミュニケーション」は、エコーズを語る時によく話題に上る曲。家にこもりゲームやコンピューター、機械とネットワークでつながる少年を描く。発表時はやっとアメリカで商用インターネットが始まった時代で、エコーズの先見性に驚く。 「ユースクエイカーズ」はアナログA面最後の曲で、仲間を見つけた喜びを歌う。
「天秤にかけた地球儀」は切ないラブソング。”もしも僕が君ならどうするだろう”と問いかけます。相手の気持ちになって考える、同化しようとする、愛と戸惑いを歌います。 「ブルーマンデー」では一週間の憂鬱な気持ちを。「STELLA」はコンプレックスを抱える少女が題材。

「ハミングバードランド」は、後のヒット作「ZOO」と似た構成で街を鳥かごに例えます。「最終出口」ではスローで終わると思わせて、少年が仲間と戦う歌。”ナイフだけでは戦えない 街を味方に付けて出口を求め走り続ける”と今までよりも強くなった感情を出してアルバムを閉じる。

全体の雰囲気は、まさに”エッジ”が効いてる。製作者側はポップでおシャレにしたかったのでしょうが、エコーズは上手く自分たちの形に取り込んでシャープな音になりました。

曲の構成やレベルも高め。バランスが良く2枚目にして既に完成度の高い作品。






・No Kidding(1986年11月21日発売)

NO Kidding

 エコーズの魅力が出た傑作。

前作のテーマに続く内容。街角で仲間との擦れ違いや去った心情,励ます気持ちを描いてます。

CDアルバムはアナログ盤とは違う構成だ。元はアナログで6曲のアルバムに、アナログ12インチシングルを追加しており、曲数が多くボリュームが有る。

「What can I Do?」では当時の人気バンドREBECCAのNOKKOさんがゲストボーカルで参加。

「愛はゆずれない」では、女の子を守ろうと強く生きる男の子の歌。
「My protest song」は団地で生まれ、転校を繰り返す少年の歌。辻仁成自身の経験が重なる内容。
「SOMEONE LIKE YOU」は、もう会えなくなった友達か好きな女性への気持ちを語る切ない歌。エコーズのバラッドでは名曲。
「ONEWAY RADIO」はラジオを題材にし語りかける歌で、バグルスの「VIDEO KILLED RADIO STAR」やQUEENの「RADIO GAGA」を彷彿させるが、懐古主義で無いのがエコーズらしいところです。後に、この曲に対して答えるように辻仁成がDJを務めたラジオのコーナーで「2WAY RAJIO」というコーナーを作り、留守番電話でメッセージに応えています。辻が、歌詞やリスナーに対し真剣だったと分かる。

そして「JACK」はエコーズ初期の人気曲。今までは、ファンが盛り上がりづらい構成の『一人称や他人を描写する曲』が多かったエコーズが、このJACKで”は街で疎外される仲間達へ語り掛ける構成”となる。エコーズがライブで観客と一緒に歌える曲となります。 アンコールが終わらずライブで何度も演奏されました。
「ピーナッツバターの海に沈めて」では、戦い続ける者に語り掛け、静かに終わります。

アルバムの音圧が低めに設定されていて、音が綺麗でかつメリハリを備え迫力がある。シンセサイザーも控えめで音作りがカッコいい。

サウンドも歌詞もレベルが高く調和している。エコーズではトップレベルの作品で、お勧めのアルバムです。



 >アナログ盤

【収録曲】
★SIDE 1★
1. One And Only
2. Dancing Tonight
3. Raindrops

★SIDE 2★
1. What can I do?
2. Crossroad again
3. My protest songv






・[ミニアルバム] JACK+STELLA(1998年5月21日発売、CD選書オリジナル企画)

元はアナログレコード版の12インチで発売された。シングルとアルバムの間に位置するメディアであり、当時は高音質で曲が長時間収録できる新しいジャンルでした。今作は2000年の再ブーム時にCD化して発売される。

ジャケットはアナログ時代の物。アートデザインは尾崎豊や浜田省吾の作品も担当した田島照久と思われるが、すごく格好いい。このジャケットだけでも買い。

アルバムは6曲も収録。エコーズの人気曲となるJACKとSTELLAが収録。JACKは一分近いイントロがある。 

収録曲:
1. JACK:Welcome to the Lost Child Club-JACK
2. SOMEONE LIKE YOU(Visitor Part2)
3. BAD BOY
4. STELLA
5. ONEWAY RADIO
6. ピーナッツ・バターの海に沈めて






・ Goodbye gentle land (1987年5月21日発売)

Goodbye gentle land

「Goodbye gentle land」。初期4作のテーマが完結する作品で、これも傑作アルバム。

 ”ジェントルランド”という題名は、辻が考えた時はジャングルランドでした。 ~しかし制作の打ち合わせで聞き間違えた人が「ジェントルランド」と言い、”面白い”と採用。そしてアルバムのテーマに沿わせるために”グッドバイ”が付与される。

古いSFのような、モノトーンのジャケットがカッコいい。
アルバム全体のテーマに対し問題と解決策を描く曲と、人物や人生の細かい描写の曲を挟んだ見事な構成。

収録曲を解説する。 
一曲目「Hello Again」は都会での息苦しさを歌い、描写も丁寧になりました。「Bulldog」では夢を追っていても生きるため社会に飲み込まれる、青年や女子の現実をブルドックに例える。

エコーズで人気作の「GENTLE LAND」は、人気曲JACKの進化版といった内容で、舞台は日本に置き換えられて共感しやすい。少年少女を描写し「愛されたい」と声を上げる。そして問題に対し「からかわれたとき嫌がると、次はターゲットになるから胸を張って生きていこう」と戦い方を教える。シングルカットされ、NHKで辻の司会番組で主題歌にもなりました。

「Tonight」はクリーニング店で働く青年の歌。短編小説のような雰囲気と丁寧な描写で辻の詩人としての能力を感じます。
「Air」は流されて生きる大学生の歌。「Sandy」は派手になってしまった女の子を嘆く歌。

「Good-by BlueSky」は、まとめの歌。ダンサーや新聞記者・・うまく街に溶け込めない、不器用で失敗した友人を描写する。クールに務める自分が”一度は別れてしまうが、今度会った時は上手くやろう”と語りかけ終わる。 アウトロのリズムが一曲目とつながる構成。

初期4作は小説を見るような雰囲気。今作で、エコーズが提示した問題全ては解決はしなかったが来るべき時に備え別れていく。期待感を持たせ終焉する。

私が初めて買った邦楽CDでした。私が悩んだ時に聞くことが多いアルバム。
人生の中で一番聞いたと思う。かなり高音質でもあり、おすすめのアルバムです。




● 中期 4-5作目  


 やや雰囲気が明るくなってきました。

 内容は、歌詞は”言いたいこと”をはっきりと主張し始める。当時のバンドブームにも合わせ、バンドらしさを強く打ち出す。

コンセプトが無くなって、一発録音を主体にする試みなどライブに強いエコーズの力を見せています。



・HURTS (1988年4月21日発売)

HURTS(紙ジャケット仕様)

 アルバムジャケットは、4人がくっきり映るようになった。
 
 制作時代ですが、この頃のエコーズは快調。ライブの演奏も素晴らしく、インタビューに残るメンバーや辻の声は弾んでおり、とても仲が良さそう。

今作「ハーツ」では、前作までのアルバム間で続くテーマ性が無くなってる。歌の内容は現実の世界で地に足がついた感じ。テーマも音楽性も再スタートしたアルバム。全体はロック色が強くなった。スタジオで作りこんでた今までと異なり、今回は一発録音がほとんどでライブ感を出そうと挑戦し、雰囲気が変わっています。

内容は、友との絆や別れの歌が多い。エコーズ自体やアーティストの気持ちを歌う。ストレートな友情を題材にする曲が増加している。 対として別れや失敗を悔やむ歌が有ります。やや小難しい部分が減って、気持ちをはっきり出しており聴いてても気持ちいい。

一曲目「(This is) Radio “K・I・D・S”」は”こどもの心”をラジオに例え、夢を失った大人に問いかける。「Freedom」は変わらない毎日を嘆き、「Money」はバブル景気でお金に狂う世の中に『俺の心を買ってみろ』と揶揄する。

「Alone」は名曲。感情を閉じて涙も流さなくなった孤独な男の気持ちを歌う。「Foolish Game」ではキリストの言葉を置き換えたように『世界の人が譲れれば皆が座れる、競うのは愛にしたい』と解決策をパワフルに歌う。
「Tug of street」はロッカーの人生と仲間との絆を描く、ECHOESの生い立ちと重なる内容。エコーズの初期はなかなか売れず、実際には余ったチケットは買い取らなくてはいけなかったそうで過酷だったようです。 バンドの事をストレートに歌っており、思うに歌詞を書いた辻仁成がこの頃からエコーズ解散を予感していたのかなと感じる。

最後の3曲は、旅の途中を描く歌。今作もエコーズが得意とする締めの歌で、上手くまとめず戸惑う感じ。問題の中でさまよい現在進行形のままで問題が解決せずに終わります。

今までに無い人間性、生身部分が垣間見えてきた作品。






・Dear Friend(1989年4月21日)

 アルバムジャケットは、4人がくっきり映りカラーになりました。

作品内容は、前作の雰囲気を昇華。そして文学性が出てきてロック色が強くなった。そして友情や愛情を強く歌う曲が増えた。曲名も漢字が増えて、少し和風になってます。

収録曲を解説する。
「Dear Friend」は変わってしまった友達を嘆き、そして待つ歌。
「ZOO」は人気が出た曲。JACKやGentle Land、ハミング・バード・ランドと似た構成で、街を動物園に例える。「片想い」はエコーズでは珍しい、女の子への片想いを題材とする可愛い唄。「アンカーマン」は、疲れた時代のバトンを渡された気持ちを前向きに歌う。

全体の印象だが、片想いや比喩,ひとりごとや文句が多い。例えると女の子に惚れた少年の独り言を聴いてるような・・。小説に力を入れ始めていた”辻仁成節が炸裂”しており、聴いている側は冷静に「だから何?」と突っ込みたくなる。力強さの反面で迷走してる。 思うにこの頃から辻仁成に独立する想いや、バンド内が分裂していたんだろう思う。

ただし良い曲も多い。内容も繊細となり、悪ぶって周りに”やや斜めに構えていた”今までと変わって、純情な少年が告白するような恥ずかしさを出しています。今作だけの魅力があるアルバム。

売り上げはエコーズで一番売れたアルバムとなりました。






● 後期 7~9作目  


 もう最後になります。
オリジナルとベストの境が曖昧で分類しにくいが、後期としました。
7作目「EGGS」がオリジナルアルバムでの最終で、コンセプトが復活した野心作です。残り8~9作はベストに近い内容。



・ EGGS (1990年4月8日)

EGGS

 新スタート。
中期作品で休んでいたコンセプトが復活し、3部作の始まりとなる予定だったアルバム。


初回版は当時は珍しいデジパック仕様で、エコーズ人気が高まっていた頃。『EGGS』のタイトルとジャケットから、テーマは”都会を舞台に新しく展開”される。

アルバム内容は辻仁成の文学性が高まるのに加えて、サウンドも新しい試みが多く異様な濃さ。初めて聴いた時は「何。このアルバム?」と思いましたが、時々聴きたくなる魅力がある。分厚いステーキのように噛みごたえがあるアルバム。

「LOVIN' YOU」はストレートなラブソング。エコーズでは珍しい強めの愛情表現で”いつまでも君を愛し続けたい”と歌います。直接語りかける構成のラブソングで、最初で最後となりました。

CD音質は、音圧が上がったのと辻仁成のボーカルが太くなる。また歌い方がくどく編曲も大げさで、エコーズと言うより”辻仁成バンド”感が強い。しかし今までにない図太いサウンドであり、増えた楽器とメンバーの演奏テクニックも熟成しており聴きどころは満載。

今作は、曲間に環境音や朗読が入るなど試みが多い。「WINGS」では複数の人間が同時に朗読し、時に自己主張して叫ぶ。 どの曲も仕掛けが凝ってる。 改めて聞くと辻仁成が暴発してるようにも感じる反面で、エコーズとしてマンネリを打破する挑戦にも取れる。

しかし残念ながら、今作後にエコーズは解散。絶頂時に終演を迎えた。ちょうど翌年にはバブル景気が崩壊するので、エコーズは上手く時代を先取りしてる。 実に勿体無いアルバムで、ぜひ残りの2作を出して欲しかった。
時々聴いては「次作はどうなる予定だったのだろう?」と想像を掻き立てます。

売り上げは好調で、エコーズで2番目に売れたアルバム。






・ GOLD WATER (1990年12月1日発売)

 アルバム「EGGS」と同年に発売されました。
オリジナルアルバムとして扱われているが、ベストに近い。おそらくレーベルと契約消化で出されたと推測します。タイトルの意味は不明。

アルバム内容は 手が込んだアルバムで『EGGS』の延長線上にある音作り。エコーズの代表曲が多く入って、かつ派手目の曲が多い。でも人気曲だけでなく、なかなか通好みの曲もある。

新しい部分は「JACK」「BETWEEN」「SOMEONE LIKE YOU」がニューバージョン。「STERRA」「メモリアルパークのチャーリーブラウン」「Good by BlueSky」がリミックス。

新曲は「ONE NIGHT DREAM」で、エコーズ最後のシングルとなる。NHK教育の番組で主題歌に使われた。

新録の「JACK」は12インチ盤で長かったイントロ部がカットされ、歌い方もかなり変わった。また全体に音圧が上がって、歌い方が濃くなってる。楽器も増えて音が厚めで、後期エコーズの雰囲気です。

ファンには目新しく感じる部分が多いので、買っても良いアルバムです。
ただし『エコーズに興味がある。新しく聴いてみたい、もしくはベストが欲しい』という方はアルバム『BEST OF BEST』をお勧め。

今作はソニーのカタログからは消えており、現在は廃番のようです。






・Silver Bullet(1991年5月2日発売)

SILVER BULLET

 『GOLD WATER』と対をなすようなアルバム。
タイトルは”銀の弾丸”で、エコーズを葬る、終わらせる意味で付けたのかな?と思う。

良く分からない存在の作品で、帯には「メモリアルベスト」と記載されている、ソニーのカタログではオリジナルアルバムに分類されてる。

こちらも実質はベスト版といえる内容。
収録曲は『GOLD WATER』を補完する構成。エコーズ後期のアルバムから選曲しバラードとスローな曲が中心。

新曲は「シルビア」と「ロックンロールは歩く鏡である。」。 初収録が「BAD BOY(ライブ・バージョン)」

新作「シルビア」は女性名のタイトルで初期のエコーズを思い起こさせる。「ロックンロールは歩く鏡である。」はロックバンドエコーズと辻仁成の文学が激突しており興味深い。 推測ですが、2つの新曲がアルバム『EGGS』に続く新作用に作られていたのでしょう。ともにエコーズ終盤のパワフルな歌詞とサウンドを持つ良い曲で、アルバムが出なかったのが残念。

今作もソニーのカタログからは消えて、現在は廃番のようです。





■ ベストアルバムCD 





・BEST OF BEST(2000年9月20日発売)

BEST OF BEST

 2000年の再ブームと再結成時に合わせて発売。

 一応、ソニーサイトでは今作がエコーズの”初ベスト”と案内されている。
辻仁成が選曲&プロデュースをし、マイケルツィマリングのサウンドプロデュース。マイケルは佐久間正秀さんと良く組む人で、BOOWY作品でも担当しました。

アルバムの特長は音質の変化。 全曲で音の雰囲気と音場・レベルが揃えられて聴きやすい。 古い曲では音圧が上がり、高音域も持ち上げられた。良いのは後期アルバムで強くなった辻のボーカルが抑えられているところで、元の中央よりで狭い音場が、今作では広くなってます。

辻本人の監修もあって、しっかりしたベストアルバム。音質が揃ってるのでファンが久しぶりにエコーズが聞きたい時に向いてる。単なる寄せ集めではなく、新鮮な雰囲気で楽しめます。

売り上げはエコーズで3番目に売れた作品となった。






・GOLDEN☆BEST ECHOES(2010年3月10日発売)

GOLDEN☆BEST エコーズ

2011年に発売されたアルバム。レコード会社が扱う廉価版Cブランド「GOLDEN☆BEST」から販売された。
この頃に、辻と伊藤は元JUDY AND MARYの恩田快人・五十嵐公太と共にZAMZA N'BANSHEで活動している。今作はエコーズ再始動とうまくタイミングが合って発売された。 翌年にエコーズは、復興支援で再々結成する。

アルバム内容は、歴代シングル集。エコーズ解散(1991年)までに発売されたシングル商品(CDシングル、400円シングル、12inchシングル)の音源で、A面・B面・カップリング曲から16曲を収録。 現在ではもうエコーズのシングルを全部集めるのは難しい、不可能に近いので、ファンにはシングルが一気に揃えられて嬉しい内容。初収録は「Surprise」。1989年版シングル「ZOO」のカップリング曲だ。
ライナーノーツには、各シングルの発売情報とジャケット画像も掲載されている。エコーズ作品を聞き直すのに便利だ。

エコーズの歴代アルバムのCDには、シングルバージョンの曲が含まれている場合が多いので、ベストやシングル集は魅力が減るのは確かだ。だが今作の良いところは、リマスタリングされていること。全体に低中音が持ち上げられて、聴き易い音質になった。エコーズは高音域が目立つ作品が多いので、今作は現代向けに整えられている。 今作は2000円で買いやすい価格も魅力だ。




■ シングル 


 シングルは現在ほとんどが廃盤。
ただしベスト版『GOLDEN☆BEST』に、ほぼ入っています。

 今回は、現在手に入る物を紹介。





現在は廃盤。ただし『GOLDEN☆BEST』にほとんどが収録。

Bad-Morning(1985年4月21日発売)
Jack(1985年10月21日発売)
STELLA(1986年4月21日発売)
GENTLE LAND(1987年3月21日発売)
Foolish Game(1988年2月26日発売)
ZOO(1989年3月21日発売)
LOVIN' YOU(1990年3月21日発売)
TWO HEARTS(1990年7月1日発売)
ONE NITE DREAM(1990年11月1日発売)





・ ZOO(2000年7月19日発売)

再発版。カップリング曲は「GENTLE LAND」に変更されている。

表題曲の「ZOO」はエコーズでも人気がある、JACKやGENTLE LANDの進化版。街の仲間たちに語り掛ける構成です。「ZOO」とカップリングの「GENTLE LAND」と聴き比べると面白い。






・ALONE(2000年10月29日発売)

ALONE
 
 再結成時に発売。
「ALONE」が入ってます。カップリングは「ALONE」ライヴ・ヴァージョン。







・そのうち愛がないなら、今すぐ僕らは手をつなげ Solidarity
2012年10月4日 ZIZZ STUDIOより発売。「ECHOES LIVE CD in 渋公ワンマン2012」とセット

[限定発売] 



● 新ユニット『ECHOES OF YOUTH』


 2010年の再結成ライブ後に作られた、辻と伊藤でのユニット。

 名前の由来は、初期エコーズのファンクラブ名から。
シングルを3枚発売しアルバムは未発売。 なかなか良い曲ばかりです。アルバムを出して欲しい。



・恋するために生まれた

 ストレートなラブソング。後半に盛り上がっていくリズムが良い。
歌詞はアルバム「EGGS」につながる雰囲気。自分が描いた理由を語り、新生ECHOESを感じる曲だ。
他に同曲のミックスと、インストルメンタルが収録される。






・ REAL

2ndマキシシングル。前作から3ヶ月で発売された。
歌詞の内容は、エコーズが成長し感じ。辻仁成ソロ作品とエコーズの中間にあたる雰囲気。
サウンドメイキングは、マイケルツィマリングがロンドンでおこなった。

1.「REAL」は渋谷公会堂でのデビューライブで一曲目となった。
2.「FILAMENT」は溝口肇氏のチェロが入る。は
3.「VISITOR2001」は、エコーズデビューシングルのセルフカバー。






・SLOW

1.「SLOW」は、ドラマ「嫉妬の香り」主題歌。辻仁成が原作企画のドラマに合わせて作られる。
スローだが力強い曲。こちらもエコーズ末期から辻のソロ初期を思わせる。
去っていきそうな愛を引き留めるために、「走らずに行こう」と語る。エコーズの「Lovin‘ You」の延長にある雰囲気。

2..太陽賛歌
3.SLOW(Instrumental)



● その他

・フィラメント デラックス版 [DVD]

辻仁成が監督・脚本を行った映画FILAMENT<フィラメント>。echoes of youth名義で曲が提供されている。なおサントラやシングルなどはリリースされていない。




■ ライブアルバムCD 

 
 ライブも定評あるECHOES。

エコーズはスタジオアルバムも完成度が高いのですがライブにかなり強いバンド。演奏に力強さと辻のパワフルさがあり、アルバムとまったく違った魅力を見せます。

 ギターも冴え、ドラムも切れがいい。ベースもばっちり。辻も元気。原曲と違うカッコイイアレンジもありお勧め。



・ECHOES LIVE CD in 渋公ワンマン2012(2012年10月4日ZIZZ STUDIOより発売)

 復興支援で行われた2012年5月8日のライブ。 1990年10月以来、22年ぶり11回目の渋谷公会堂。
渋谷公会堂でのライブ来場者への配布用非売品CDを、LIVE盤CDとセットで400セット限定で販売。

 [ショップ限定版]


参考ページ:ライブ告知 http://echoes.zizz-studio.com/

・再販売版
EUPHORIA ECHO > ECHOES > ECHOES LIVE CD in 渋公ワンマン2012
http://amnicola.shop-pro.jp/?pid=49131731



■ 映像作品 


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 ECHOESの映像作品自体は多いが、現在はほぼ廃盤。
ただし限定でまとめられたBOX集が出ています。

 ライブはパワフルで、「Border Line」などアルバム未収録の曲も演奏してファンには嬉しい内容


VHS,LD時代の作品で 現在は廃番、入手難。

・ FOOLISH GAME(1988年2月26日発売)
・ THE BORDER Vol.1 ECHOES LIVE AT SHIBUYA KOKAIDO(1988年9月21日発売)
  THE BORDER Vol.2 ECHOES LIVE AT SHIBUYA KOKAIDO(1988年9月21日発売)
  ※Vol.1とVol.2のセットも発売


・SELECTION(1989年10月8日発売)

・LIVE at 武道館 Columbus' Egg '90(1990年発売)

・the echo of echoes -LIVE RUST TOKYO 1981-1991(1991年発売)





・ONE NIGHT STAND IN THE ZOO
(2001年7月18日発売)」 DVD

 10年ぶりの再結成。
2000年12月28日、一夜限りの復活を果たしたエコーズの武道館ライブを収録。

 メインは辻と伊藤。アンコールで伊黒、今川が「ZOO」「ONE WAY RADIO」「SOME ONE LIKE YOU」で参加。

 新曲「恋するために生まれた」が収録。






・DVD-BOX「ECHOES on the MOVE」
(2011年 ソニーミュージックショップ:オーダーメイドファクトリーで商品化)

 2011年、再始動時に発売。1991年に解散したエコーズの映像作品の集大成です。

 4枚組のDVD BOXで「完全生産限定盤」。映像商品5作品を初DVD化。
収録:『Foolish Game』『Selection』『THE BORDER LIVE AT SHIBUYA KOKAIDO』『LIVE at 武道館~Columbus’Egg‘90』『THE ECHOE OF ECHOES』

2014年に一度、オーダーメイドで復刻しています。現在は売り切れ。





■ 書籍 





・エコーズ タッグ・オブ・ストリート (宝島コレクション)

 小説風。エコーズ結成とバンドの経緯を描く。
BOOWYの本『大きなビートの木の下で』みたいな感じ。






・バンドスコア ECHOES BEST OF BEST (バンド・スコア) 楽譜 ? 2000/11/25

  2000年発売のCDベストと同内容。
人気の12曲入り。






・ECHOES―Scrap and Build 大型本 1989/5
 中村 ねこ

 写真集。ややプレミア気味。





■ あとがき 「Tug Of Street」


Telecaster
Telecaster / Konrad Karlsson



 「ECHOES」は活躍した時期が20~30年以上前となりネット普及の遙か前。作品解説がほぼありません。そこで自分で記事を書いてみました。


エコーズは、主流に乗らず自分たちの音楽を貫き、時が経っても古くならない普遍性を持つ。

 最近色々有って、私も人並みに落ち込んでました。そこで気に入ってるエコーズの全作品を改めてじっくり聞きました。

エコーズはロック色が強く、アルバムもまた発売毎にスタイルが大きく変化します。

聞き直して感じたのは、ほとんどの曲が現在進行形であり、提起した問題に結論が付かず終わる。アルバムGENTLE LANDでは「からかわれたときに嫌がると、次はターゲットになるから胸を張って歩いていこう」と、どんな現状でも戦い歩くと歌います。 ~時には、仲間を見捨てる・機会を待つ為に逃げる歌詞もある。

確かに、現実も同様です。問題や逆境に悲しんでも答えが出なくても、死別や恋人との別れはある。今勝てないなら、チャンスを待つのも賢い生き方でしょう。エコーズ作品はシニカルにクールに状況を見つめ問いかけます。

以前、辻仁成は明るい応援歌の流行に憤り「(リスナーは)何かある度に、頑張れと応援する曲を聴くのか?それでは成長しないだろう」と応援歌の流行を批判している。流行に迎合せずに持論をはっきり言うのがエコーズの魅力です。

ECHOESの歌には現実味があり、エコーズ自体の活動も不器用な経歴を持つ。一度目の解散は良く分からないまま空中分解。アルバムもどれがラストか分からない。けじめを着けて解散した”BOOWY”とは違い、曖昧な終わり方。 ただしBOOWYと同様にエコーズも人気絶頂時に解散している。この辺りがエコーズの強さでしょう。

メンバーの着実な活動は実り、現在に繋ります。2000年のリバイバルブームに乗り一夜限り再結成。その後は辻と伊藤でエコーズユースを結成。そして4人で再々結成して解散宣言をせずに今に至る。 「ちょっと追いかけて、ちょっと逃げよう」。エコーズのメンバーは集散を繰り返す。辻仁成は結婚を繰り返し長髪の怪しい雰囲気。変わってしまったんだね、と問いかけたくなる。しかしエコーズユース名義で曲を出せば内容は良いし、再結成の機会を逃さず行動する。見た目やスキャンダルとは異なり、地に足が付いた感じ。

メンバーや辻仁成も大人になり、距離感を取るのが上手になった。無理して別れずに、再開する余地を作るように成長しました。

そして活動も続く。
なかなか20年以上間を空けてオリジナルメンバーの結成って無いでしょう。すばらしい友情とロック精神です。


これからも、ECHOESの活動に期待します。



■ 更新情報

2021年12月14日 echoes of youthの曲解説を補填、映画FILAMENT<フィラメント>を追加。GOLDEN☆BEST ECHOESの解説を追加
2019年7月2日 KRB amz lady-n用タグを修正
2017年9月11日 私事削除。
2017年4月19日 文章調整、プレイヤーのアルバムアート画像追加。


■ 関連、参考サイト

・ソニー > エコーズ


>オーダーメイドファクトリー ・スペシャル企画「ECHOES on the MOVE」追加販売のお知らせ


・Wiki
 https://ja.wikipedia.org/wiki/ECHOES
 https://ja.wikipedia.org/wiki/辻仁成のオールナイトニッポン
 作品の発売日とラジオの放送タイトルを参考にさせて頂きました。

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